三田祭講演会 「ロボトーーク どうなる!?ロボットと人工知能の未来」

三田祭にて学生が企画した講演会「ロボトーーク どうなる!?ロボットと人工知能の未来」が開催されます。ロボットと人工知能の問題。20年前にはSF映画だけの話題になるのではと思っていたのですが、確実に私たちの実際の生活に入ってきていますね。

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【日時】11月23日(木、祝)13:00~13:50
【場所】三田キャンパス南校舎ホール
【出演者】経済学部 駒村康平教授
     経済学部 土居丈朗教授
     SFC研究所上席所員 白井宏美博士
     法学部 大石ゼミ塾生
     スペシャルゲスト 鈴木ちなみ


第59回三田祭実行委員会
本部企画局
寺田萌香

 

「医学生は医学教育をどう見ているか」

医学書院/週刊医学界新聞(第3248号 2017年11月13日)

 

週刊医学界新聞に掲載された「医学生は医学教育をどう見ているか」の記事より。2016年の12月に行われた全国70医学部の学生4129人から得たアンケート。

「目指す医師・医学者像を考える機会を十分に得られているか」という問いに対して、「不十分」「やや不十分」が43% である。

「今の医学教育により、自身が目指す医師・医学者像に近づけると思うか」という問いに対して「まったく近づけない」「近づけない」が41%である。

「新専門医制度の議論に学生の声をもっと反映させることが必要か」という問いに対して、45%が「必要だと思う」と答えている。

 

目指す医師・医学者像というのを知りたいが、それはいい。不満の声が4割を超えているという数字の読み方はよく分からないが、医学生の意向と医学教育の在り方に問題が多いということは事実だろう。医療も、近年の技術発展と制度改革に、医師や学生が疲れているのだろうか。

『いつか王子駅で』

堀江敏幸. いつか王子駅で. 新潮文庫. Vol. ほ-16-1: 新潮社, 2006.

この本を買ったのは王子のあたりについての感覚を持ちたかったからなのか、堀江敏幸というフランス文学を修めた作家に興味があったのか、どちらか忘れてしまった。王子のあたりでも、「尾久」という地域が軸である。私が調べている病院があった西ヶ原のあたりとは少し方角が違うが、今の段階では、そんなことはどうでもいい。その地域に住む人たちについての知識を文学から持ちたかったということにしておく。

 

登場人物はこのような感じである。

私-おそらく著者の分身だと思うが、外国文学を非常勤で教える人物。東京水産大のようである。
正吉さん-友人。印章屋で昇龍の彫り物をしている
居酒屋「かおり」の女将
古書店の主人の筧(かけい)さん
旋盤の工場をしている大家の米倉さん、娘の咲ちゃん
数々の文学作品、童話、競馬の馬たち

 

小説として面白い。大事件なり何かの発展なりストーリーなどは、まったくない(笑)でも、読んでいい感じが残る。ただ、作品中盤から競馬の話がちょっと出すぎた感じがあって、競馬の第四コーナーにたとえられた空間で話が終わるのは、ちょっと違和感を感じた。前半の木曽馬の「馬力」の話は納得した。

新刊ーヴィクトリア時代イギリスの精神病院における患者の身体について

historypsychiatry.com

h-madness の記事でしばらく前からアマゾンを空けると必ず推薦されていた新刊の中身が多少わかるようになった。精神病院の患者に関するさまざまな資料から、患者の身体部位に医療者がどのように反応・対応したのかという研究であるとのこと。皮膚、筋肉、骨、脳、体液などが問題として取り上げられている。私が見ている20世紀日本の症例誌でも十分成立する手法である。ただ、そういう研究をすると、どんな重要なことが分かるのかということが、まだ研究者として想像できない。でも、研究のヒントを得るために、今年の12月に刊行されるので予約購入することにした。3,000円とそれほど高価ではないし、別の学者が症例誌の記述を異なった仕方で分節化するのを見ておくのはとてもいい勉強になるだろう。

Wallis, Jennifer. Investigating the Body in the Victorian Asylum: Doctors, Patients, and Practices (Palgrave Macmillan)

This book explores how the body was investigated in the late nineteenth-century asylum in Britain. As more and more Victorian asylum doctors looked to the bodily fabric to reveal the ‘truth’ of mental disease, a whole host of techniques and technologies were brought to bear upon the patient’s body. These practices encompassed the clinical and the pathological, from testing the patient’s reflexes to dissecting the brain.

Investigating the Body in the Victorian Asylum takes a unique approach to the topic, conducting a chapter-by-chapter dissection of the body. It considers how asylum doctors viewed and investigated the skin, muscles, bones, brain, and bodily fluids. The book demonstrates the importance of the body in nineteenth-century psychiatry as well as how the asylum functioned as a site of research, and will be of value to historians of psychiatry, the body, and scientific practice.

Medical History 書評委員長を退任いたしました。

Med Hist Volume 61(4); 2017 Oct

 

2013年の57巻1号にはじめた雑誌Medical History の書評委員長の仕事を、2017年の61巻第4号の出版で終了し、退任いたしました。5年間のあいだ、書評構成の仕事を手伝ってくださった皆様に、心よりお礼を申し上げます。Medical History の編集局のみなさま、ことに編集長の Sanjoy Battacharya 先生は、とても楽しい仕事の環境を作ってくださいました。ケンブリッジ大学出版会のみなさまは、きちんとした仕事で、慣れない私のミスを何度も救ってくださいました。私の研究室のスタッフ、特に後半の数年間、書評者決定にいたる作業をこなしてくださった慶應英文の卒業生の塚本紗織さん、どうもありがとうございました。的確さの権化のような素晴らしいお仕事でした。また、書評執筆のお願いに答えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。年に4回の新刊書一覧を作成してくださった東大研究員の奥村大介君にもお礼を申し上げます。冒頭にリンクを掲げた私が編集した最後の号には、成蹊大学のFuhito Endo 先生が書かれた書評も掲載されております。ぜひご覧ください。

書評委員長をしておりますと、さまざまな言語で出版された本が世界中から研究室に送られてくるのも、ちょっとした壮観です。英語が中心ですが、ヨーロッパ系のあらゆる言葉で出版された医学史の書物が研究室の棚に並んでいました。その中にはいろいろな本があり、一流の大学で教育されて医学史の研究者になった若手学者が書いた野心的な書物と、年老いたお医者さまがご自身のお祖母さまの資料を丁寧に調べて出版された小ぶりですが誠実な書物などが並ぶ棚は、医学史という学問の広がりと意味について、私の考えを大きく変えて深めたと思います。

新しい書評委員長は ヨーク大学の Tara Alberts 先生です。ケンブリッジ大学で博士号をとられ、初期近代の南アジアや東南アジアがご専門です。Medical History の書評欄の充実を続けていただけることと思います。雑誌の刊行とほぼ同時に、PubMedCentral に電子版がアップロードされますので、ぜひご覧ください。

映画『プラネタリウム』と降霊術の世界

planetarium-movie.com

一つ大きな書評を終えて、仕事をしなくていい土曜日を作り出した。静岡で映画『プラネタリウム』を実佳と観る。ナタリー・ポートマン、リリー=ローズ・デップ、エマニュエル・サランジェが出演している。
 
1930年代のパリとフランスが舞台。アメリカ人のスピリチュアリストの姉妹が、降霊会やショーを提供して一儲けするためにパリにやってきて、そこでフランスの映画プロデューサーの目に留まり、超常現象や亡霊を映画に収めようという仕事に協力する。しかし、このスピリチュアリズムというのはもともとインチキであり、映像化の試みももちろん失敗し、映画プロデューサーはユダヤ人であったこともあって会社の金を使った外国人として投獄される、という話である。
 
この映画には歴史的な実話が二つからんでいる。一つはアメリカ人のスピリチュアリストの姉妹の話で、これは19世紀の後半にNYで活躍した三人姉妹のフォックス姉妹 Fox sistersをかなり忠実になぞっている話である。映画では二人の姉妹になっているが、実務にたけて売り込みがうまい姉(ナタリー・ポートマン)と、霊媒でなにかぼけている妹(リリー=ローズ・デップ)という設定も同じである。それ以外に、あちこちでフォックス姉妹のエピソードが織り込まれていた。英語 Wikipedia を読むと、いくつかの場面や演技が歴史的にフォックス姉妹にインスピレーションをたどるためだということがよくわかる。もうひとつは、フランスに住むユダヤ人の映画プロデューサーは、ベルナール・ナタンという、1930年代に活躍したフランスの映画監督をモデルにしているとのこと。 私がまったく知らない人物だが、ちょっと調べてみると、フランス映画の礎を築くと同時に、ポルノ映画を製作・出演したともいわれているとのこと。ポルノ映画云々の話に基づいた場面もあった。
 
医学史家として、降霊術やサイコの市場性に関する話が面白かった。また、二つの世界大戦の間に挟まれた時代に設定したことで、前の大戦での数百万の死んだ兵士たちの亡霊や、第二次大戦のホロコーストとつなげる話作りが可能になったことも勉強になった。俳優たちはもちろん総じて実力者ばかりで、リリー=ローズ・デップは、演技をいっさいしなくていい役だった。彼女はジョニー・デップヴァネッサ・パラディの娘であるが、お母さんに似たのだろうか(笑)
 
フォックス姉妹については、こちらをさっと読みました。1888年に自らこれは壮大なインチキだったと告白した部分が強調されている。彼女たちのごまかしの自白を引用しておく。
 
"That I have been chiefly instrumental in perpetrating the fraud of Spiritualism upon a too-confiding public, most of you doubtless know. The greatest sorrow in my life has been that this is true, and though it has come late in my day, I am now prepared to tell the truth, the whole truth, and nothing but the truth, so help me God! . . I am here tonight as one of the founders of Spiritualism to denounce it as an absolute falsehood from beginning to end, as the flimsiest of superstitions, the most wicked blasphemy known to the world." – Margaretta Fox Kane, quoted in A. B. Davenport, The Deathblow to Spiritualism, p. 76. (Also see New York World, for October 21, 1888 and New York Herald and New York Daily Tribune, for October 22, 1888.)
 

オランダの薬箱

https://www.amazon.co.jp/Collectors-Cabinet-Miniature-Pharmacy/dp/9491714724/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1510221836&sr=8-1&keywords=collector%27s+cabinet+with+miniature

 

オランダのアムステルダム国立博物館が所蔵する薬箱についての詳細な書物。おそらく18世紀のアムステルダム薬種商か医師が持っていた薬箱であるとのこと。当時の薬種商のお店の薬棚をミニアチュアにする発想である。大きなタンスに扉と棚と容器が複雑についていて、その総てが説明されている。夢のおもちゃ箱のようなもの、あるいは大きくて複雑なドールズ・ハウスが近いのかもしれない。さまざまな植物、鉱物、動物系の薬物を専門家による詳細な研究を経て同定してある。そのカタログも素晴らしい。7,000円を超える商品だが、私は十分に満足した。

 

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