「女性とコレクション」雑誌特集号論文の公募

私は医学史の研究者で、扱っている時代が色々と合わせても初期近代から20世紀中葉頃までである。医師に注目するとどうしても男性ばかりになる。看護人は女性の看護婦が多いが、まだきちんと研究したことはない。女性がたくさん存在して研究のマテリアルが潤沢にあるのは女性の患者になる。女性患者が何かをコレクトしたケースというのは、私が見ている精神病院の症例でも時々あり、出版されたものになるといくつかある。書いてみたいけれども、他の優先すべき仕事もあって、日程的にいって、この特集号に間に合わせてまとめあげるのはちょっと苦しい。

日本史の研究者やアーキビストたちも、女性が集めたコレクションについて何か言いたいケースはありませんか?もちろん医学や科学だけでなく、人文学、芸術、ビジネスなど、何のジャンルでもいいので、どうかご応募ください。

https://networks.h-net.org/node/9782/discussions/1157447/cfp-women-collections

CFP: Women & Collections

Discussion published by Juilee Decker on Tuesday, December 26, 2017 0 Replies

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Type: Call for Papers
Date: February 15, 2018
Subject Fields: Archival Science, Area Studies, Women's & Gender History / Studies, World History / Studies, Humanities
Focus Issue:
Women & Collections
Guest Editors: Consuelo Sendino, Natural History Museum, London,
Janet Ashton, British Library, and Margot Note, Independent Consultant
Women have not been only inspiration for the cultural world, but been also active as collectors or researchers in collections. They have left their mark in science, natural history and art. Important contributions to cite chronologically are those of Catherine the Great of Russia (1762-1796, art collector), Frances Mary Richardson Currer (1785-1861, book collector), Mary Anning (1799 - 1847, fossil collector) and Gertrude Bell (1868-1926, archaeologist who helped with the establishment of the National Museum of Iraq with one of the best collections of Mesopotamian antiquities).
Although the role of women has been important in collections, it has not been so popular as with males. This issue will display different roles in which women have been active in collections such as active collectors, known by their input in collections or for inspiration.
Articles might be focused on any role played by women regarding collections:
* Women as collectors
* Women as collection researchers
* Women as inspirational point of view
* Women as collection subject
For this issue, we are seeking articles and case studies of 15-25 pages, reviews, technical columns, and observations. See https://rowman.com/Page/Journals for more information about the journal. For more information, contact the journal editor, Juilee Decker, jdgsh@rit.edu.
Published by Rowman & Littlefield, Collections is a multi-disciplinary journal addressing all aspects of handling, preserving, researching, interpreting, and organizing collections. Established in 2004, the journal is an international, peer-reviewed publication that seeks timely exploration of the issues, practices, and policies related to collections. Scholars, archivists, curators, librarians, collections managers, preparators, registrars, educators, emerging professionals, and others are encouraged to submit their work for this focus issue.
Authors should express their interest by submitting a 150-word abstract to the journal editor by February 15, 2018.The deadline for submission of final papers is April 1, 2018. Publication is anticipated for volume 14 or 15 with an issue date of 2018 or 2019.
Contact Info:
Juilee Decker, Ph.D.
Associate Professor, Museum Studies
Rochester Institute of Technology
Editor, Collections: A Journal for Museum and Archives Professionals
Contact Email: jdgsh@rit.edu
URL: https://journals.rowman.com/products/authors/751430-collections/list

パンデミックのSF小説

来年に一つパンデミックに関する論文を書ければいいと思っている。もちろんまだ研究の状況が分かっていない。パンデミックのゲームという新しいマテリアルが重要なピースだけれども、その話まで持っていけるかどうか分からないし、そもそもパンデミックを主題にした学術研究をしたことがないので、まったく見当がつかない。マテリアルや研究をぼつぼつ集め始めているというのが素直なところである。
 
エコノミストから来た特別面白いコラムの特集を読んでいたら、第二次大戦後のアメリカでパンデミックによる人類滅亡のSFが数多く書かれているという。George Stewart の Earth Abides (1949)、Richard Metheson の I Am Legend (1954)、 Stephen King の The Stand (1978) 、それから Max Brooks の World War Z (2006) などである。World War Z はしばらく前に翻訳の文庫本を買ったことがあったが、他のテキストは知らなかったので買っておいた。ついでに、小松左京の『復活の日』(1964) と『日本沈没』(1973)も読んだことがなかったから買ってみた。
 
アメリカの作品についての解説を読んでみたら、疾病の大流行―人類ほぼ壊滅―生き残った人々が問題の疾病の特徴を知り、新しい社会を構築するという三段階のプロセスがあるような気がする。そうすると、疾病研究と対策の部分が、パンデミックの話と重なる部分が出てきてゲームになるような気がする。
 
ちなみに小松『復活の日』は、イギリスの細菌兵器が盗まれてという話で、英訳は Virus であるとのこと。英語の論文にするときには、この話を冒頭に置こう。いや、学術論文を書くときには、本当は、こんなことを考えてはいけないのですけど。手持ちの持ち駒が弱くなっている時には、こういうことを考えるのですね。

アメリカの医学史とイギリスの新しい医学史

イギリスの新しい医学史、特に新しい精神医学史の発展についての文章を書いた。これは1920年に創設された慶應の医学部の創設100年を記念して『近代日本研究』で組まれる特集に寄せたものである。本来なら、慶應の医学部の歴史や、そこでの医学史の教育などに触れたかったけれども、調べる時間を取ることができなくて、自分が知っているマテリアルだけで書いたものである。身分は研究ノートだけれども、実際は雑文に近いものである。ただ、イギリスの医学史の成功のメカニズムについて自分が考えていることを記すことができたのは少しうれしい。
 
その中で、アメリカの医学史とイギリスの新しい医学史を対比させる箇所があった。意外なことが、アメリカの医学史と較べたときに、イギリスの医学史は新興国の営みであるということである。アメリカでは20世紀の前半・中葉から、ドイツからの医学史研究者の移民をうけて、ホプキンスをはじめとする一流大学の医学部や医学校に医学史の学科や講座が設立された。ドイツのシステムにならい、医学部の中での講座としての位置づけであった。教授たちはもちろん医学を学んだ医師であり、教育のベースは医学生に教えることであった。ヘンリー・ジゲリスト、オウセイ・テムキン、アーウィン・アッカークネヒトたちがこのモデルを代表する。もちろん、このモデルとは少し違う人文系で学んだ医学史研究者もいた。たとえば、『近代医学の発達』を1930年代に著した R.H. シュライオックは、歴史学の出身で、ホプキンズの医学史研究所の所長までつとめたが、彼のあとをついで所長になったのはテムキンであり、シュライオックの著作は現在ではほとんど読まれていない。アメリカの医学史は、さまざまな意味で非常に医学よりの医学史であった。その中で圧倒的に水準が高い洞察や研究が行われていた。
 
一方で、イギリスで1970年代から80年代に離陸を始めた新しい医学史は、医学部ではなくて人文社会系の学問が中軸となった。ロイ・ポーター、チャールズ・ウェブスター、リチャード・スミスたちが人文社会系の医学史研究者にあたる。彼らがアメリカの洞察とは異なる方向の「新しい医学史」を発展させていた。もちろん、W.F. バイナムやクリス・ローレンスのような医師もいる。しかし、彼らは、大学院で人文社会系のコースで学ぶという経緯を経ていることを忘れてはならない。
 
この新しい医学史の構成の仕方を論じたのが、近刊の雑誌論文である。刊行されたらご案内いたします。ちなみにシュライオックの著作は以下の通り。
 
Shryock, Richard Harrison, and 功 大城. 近代医学の発達. 平凡社, 1974.

心理学の実験 - 不眠記録の達成

 
Quora Digest で読んだ話。1965年にアメリカの17才の高校生男子が11日間(264時間)一睡もしなかったという記録を打ち立てたという記事。これは心理学の研究者などによって科学的に測定されながらの記録達成であり、科学的な権威がある記録であり、いまだ破られていない。ただ、それと同時に、破ることが原理的に難しい記録である。睡眠とは何か、どんな睡眠を検出できるのかは、その時代の知識と技術によって変わってくるから、この11日間という記録は、1960年代の知識と技術の枠組みの中で達成されたものである。それから50年すぎた現在では、睡眠に関する知識と技術の双方が大きく変わっていて、新しい枠組みの中での不眠ということになってしまう。
 
もう一つが、この実験自体は酒の席で笑える小噺であるが、この実験をめぐる心理学などの状況は、必ずしも笑い話ではないだろうと思う。被験者の Randy Gardner には長期的な影響は出なかったけれども、基本、なにが起きるか分からない実験だと私は思う。それよりも重要なのは、同時期に他のさまざまな心理学的な実験が人間をサンプルにして行われていたことである。精神医学の世界でも、薬物を取って何が起きるかを実験すること、外界との接触を断って完全に孤立した状態に何日間も置くなど、さまざまな被験者に有害な実験が行われていた。そのような事例に関する本で、以前から読みたいと思っていた本を買った。一般向けの本だが、科学史を大学院で学んだ実力ある書き手によるものである。英語だとKindleで1,300円くらい。日本語に訳されていて、これは数百円で買えます。年末年始の空いた時間にぜひどうぞ。
 
Boese, Alex. Elephants on Acid : And Other Bizarre Experiments.  London: Boxtree, 2008.
 
奇想天外な科学実験ファイル : 歴史を変えた!?
アレックス・バーザ著 ; 鈴木南日子訳
 
 
 

鳥のはばたきの軌跡

 
来年のナショジオは一年間を通して鳥の特集とのこと。少なくとも最初の号は買おうかなとかなり迷う。最初の企画が一級品で、鳥が空をはばたく軌跡を再現しようというものである。蛇が砂の上を這うと砂に特徴がある模様を残す。人間や動物なら地面に足跡を残す。これは砂や地面が軌跡を残して保持できるから、日常的に見ることができる。しかし、鳥が飛ぶのは空であり、空気にはあとが残らない。それを写真のテクニックで再現しようというのである。なんという面白い企画なんだろう。これがその一枚。うううむ。やるな(笑)
 

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医師勤務環境のデータなど

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03253_01

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000097847.pdf

週刊医学界新聞の最新号が「医療勤務環境の自主改革」という大きな記事を掲載している。そこで言及されていた日本産婦人科医師会による女性医師の就労環境も眺めてみた。これは偶然の産物ということもあるのだろうけれども、私が直接知る人たちの中で、医師たち、特に女性医師たちが、若いころに過酷な環境での労働に置かれていることを実感している。医療の世界を引退した方、なかば引退した方、あるいは最悪のケースで自殺した方も存じ上げている。才媛で、水準が高い医学部で訓練され、やりがいがある仕事をせっかく初めたのに、それが堪えられずにこの世界を去っていくという現実は、いったい何を意味しているのか、考えることも多い。しかし、色々と分からないことも多く、そのことと私が直接関係していることは、本来は関係ないこととして対処するべきであるというような思いもあり、私の人生の中で、私が方向を見失っている部分でもある。そういう場所でのふるまいこそが、私自身だけでなく、助けを必要としている人たちにとって貴重なのだろうと思う。

カカオとココアとチョコレート

Davidson, Alan, Tom Jaine, Jane Davidson, Helen Saberi, and Soun Vannithone. The Oxford Companion to  Food. 2nd ed. / edited by Tom Jaine ed.: Oxford University Press, 2006.
 
Alan Davidson の Oxford Companion to Food は、世界中の食材を取り上げた性格で面白い浩瀚なレファレンスである。私が持っているペーパーバックの初版でいうと1,000ページ以上あり、肉筆手書きのイラストが博物誌の雰囲気を醸し出していてとてもよい。ちなみに、ぺーバーバックになると Penguin Companion to Food と書名が変わるという不思議な現象がある。あと、ちょっと心が迷って、これを kindle で買ってみたが、検索する仕掛けがついていないという欠陥を持っていて残念だった。
 
今日は、このレファレンスで調べたカカオとココアとチョコレートの話。私が初めて知ったことがあったのでメモ。
 
もともとはチョコレートの「レート」は牛乳を意味する lait や latte かを確かめるという単純な調べ物だった。私は choco-latte かと思っていたが、中南米の現地語からの生成であるとのこと。chocol はマヤ語で hot の意味、atl は ナフアトル護で water の意味であるとのこと。
 
それより面白かったのが、ココアの概念とチョコレートとの違いの話。実佳がイギリスからホット・チョコレートを買ってきて、これが6食分で5ポンドと高価ということもあるが、とても美味しくて、ココアとは違う飲み物だという感じがする。私はもちろんココアも好きだけど、それどもイギリスから買ってきたホット・チョコレートは、そのはるか上を行くおいしさである。それで、レファレンスでココアを調べてみると、その違いが分かった。ホット・チョコレートというのは、カカオ豆をすりつぶしてそこに牛乳などを入れてつくる。しかし、ココアは、カカオ豆からいったんおいしい部分を取り去った残りのものに、牛乳などを入れて飲めるようにしたものであるとのこと。廃棄物あるいは残り物の再利用である。それはホット・チョコレートとは味が違うはずである。
 
もちろん、牛乳と砂糖が入って、そこにそこそこコクがあるスパイスが入っていると、とても幸せになる飲み物になる。ココアは生涯飲み続けます(笑)