クリムトと日本・中国・ビザンチン帝国
ロンドンの RAでクリムトとエゴン・シーレ。今回も観ることができないが、クリムトとシーレの手書きの描画がたくさん出てくるという、RAのような大美術館としてはむしろ新しい企画であるとのこと。この「60秒でマスターできるクリムト」を観ていたら、ウィーンでの古典的な美術を破壊するために、さまざまな新しい手法や思想があった。シンボリズムなどはもちろんだが、彼が金細工職人の息子であったことに、一つの大きなヒントがあるとのこと。また、ヨーロッパ古典ではないものを追求する態度の中に、中国と日本とビザンチン帝国の美術に影響を受けたと言う。クリムトと職人のこと、中国、日本、ビザンチン帝国のこと。とても面白そうです。とにかく、カタログは絶対に買います!
16世紀メキシコの感染症による壊滅の病因について
『夜明け前──呉秀三と無名の精神障害者の100年』上映会との共同企画 兵頭さんからのご案内
兵頭晶子さんから広報のメッセージを頂きました。12月22日に映画『夜明け前』についてお話をされるとのこと。以下がおしらせになります!
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今井友樹さん監督作品の記録映画『夜明け前──
タイトルは、「病むとされる側から見た「監置」と「精神病」」。
6月のシンポジウムで得られた知見を引き継いで、
御関心がおありの方は、ぜひお運び下さい…! 兵頭晶子
『封神演義』と天然痘
『ハンセン病の歴史』などの無料小冊子配布
https://www.york.ac.uk/history/global-health-histories/publications-outreach/leprosy/
ヨーク大学の歴史学科で教授をしておられる医学史家のサンジョイ・バッタチャリア先生。これまでも何回か来日され、来年も慶應日吉で講演されることになっている。バッタチャリア先生が紹介してくれた、ヨーク大学がこれまで刊行しておられる疾病の国際史の小冊子を読んでいた。これは世界のハンセン病の歴史と現在と将来の小冊子で、英語と(おそらく)ポルトガル語の二言語構成である。世界各地のハンセン病の歴史がコンパクトに描かれている。
日本からは、中谷比呂樹先生と宮坂道夫先生が書いていらした。中谷先生は、慶應の医学部を卒業後、厚生省からWHO に進み、 HIV やマラリアなどを担当する責任者となった。近年は慶應や阪大の特任教授をされている。宮坂先生は『ハンセン病 重監房の記録』などをお書きになり、ハンセン病患者が隔離されて置かれたマイナスの側面を強調している。いずれも素晴らしい文章である。近現代の日本について貴重な画像が掲載され、中世ヨーロッパの図版も素晴らしい。多くの図版も大いに参考にされてください。
中谷先生の文章で可笑しい個所があった。岡山愛生園を訪れた話をされたところで、神谷美恵子と彼女が訳したラテン語の『自省録』の話をして、これは当時の慶應医学部でのラテン語の授業のテキストだったと書いている。私はラテン語は基本的には挫折したが、そんなに慶應のラテン語の授業は難しかったのか(驚愕)
それ以外にも、結核、精神疾患、熱帯性疾患などについても、別々の無料DL冊子が刊行されています。ぜひご覧になってください!
剽窃研究のディシプリン(笑)
日本の評論家が外国の学者の著作を剽窃していたということが話題になっている。色々と仰る皆様がいるだろう。私も一つ言っておきたいことがある。どちらかというと楽しい話です(笑)
ドイツには剽窃研究を専門にしている学者がいる。メディア学か情報学の学部の先生である。数年前に、彼女からメールがきて、私が編集委員だった雑誌に剽窃出版があるという。書評で剽窃をするというのは、もちろん理論的には可能だが、何が起きたのだろうと不思議に思っていて状況を確認すると、なるほどこれが起きたのか、そしてそれを剽窃ということが確かに必要なんだという、不思議な納得があった。
まったく同じ書評を二つの号に続けて出してしまったのである。書評編集委員長の前任者との連絡のある部分がうまく行かなくて、一つの書評が、彼が委員長だった号と私が編集長だった号に、連続して掲載されてしまった。似ているとか類似しているとかそういう問題ではなく、全文がまったくの合同であった(笑)これを「剽窃」というのかと思ったが、「これは剽窃の理念型である」という剽窃学者の論述も素晴らしく、それに関して書評者を責めるわけにもいかず、編集長の責任というわけにもいかず、まあ、やはり、私の責任となり、誌上で書評上のダブりを謝罪するという事件がありました。
それ以来、私も、これが剽窃の理念型であるということを頭において現実の世界を見るようになりました。この経験、よかったですよ(笑)