坂井建雄編『医学教育の歴史ー古今と東西』を頂きました!

坂井先生は日本医史学会の理事長であり、様々な意味で最高の指導者である。解剖学の歴史として、ヴェザリウスの研究、伝記の翻訳、緻密で詳細な解剖書の一覧、そしてガレノスの翻訳など数多くの優れた仕事をされた。日本医史学会の理事長としても、優れた論文集の編集など、素晴らしい仕事をされてきた。私たちが深く尊敬する指導者である。

坂井先生が編集された『医学教育の歴史』は600ページ近い論文集である。坂井先生のヨーロッパの医学史を中心に、イギリス史や日本史の脈絡での論文が12章集められている。教育史に関する一般論ではなく、「医学の歴史における重要かつ本質的な問題を掘り下げる著作である」とのこと。論文集には、そのような洞察が数多く含められていることと思います。楽しみに読み解きます。ありがとうございます!

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坂井先生が編集された『医学教育の歴史』です。素晴らしい気品を表紙が発していますね。

 

「医学史と生命科学論」2019年度の慶應日吉で新しいセミナーが始まります

2019年度から慶應日吉キャンパスにて、教養研究センターの基盤研究<文理融合プロジェクト>の企画として、「医学史と生命科学論」を開催いたします。欧米での発展はもちろん、日本の優れた大学の企画も参考にして、新しい試みです。医学史と生命科学論の最前線の一流の研究を発表するだけではなく、それをどのように同じ職場や同じ興味関心の研究者と結びつけ、さまざまな水準の教育をどのように実現するのかを考える試みです。

講演は一か月に一回、火曜日の18時15分から開催します。時間は全体で90分、45分か1時間くらいの講演と、残り時間でのディスカッションを行います。講演は撮影されて映像になり、数日後にYouTube で講演とディスカッションが公開されます。原稿と参考文献なども公開します。同時中継でディスカッションに参加できるという技術の利用については、少々お待ちください(笑)

2019年度春学期は、以下のような講演のラインナップを用意しています。医学史を私が、生命科学論は荒金先生、医療経済学は松浦先生にお願いいたしました。2019年度秋学期については、医療経済学、医学と文学などの講演者にお願いし、ほぼ決定しております。2020年3月に、6人の講演者で一日のシンポジアムを予定しています。

慶應日吉の特色を活かし、 YouTube を利用した新たな試みです。よろしくお願いします。

 

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2019年度の新しい企画「医学史と生命科学論」が始まります!

 

LとR、FとV(涙)

数日前にこれからは「ヴ」と表記しないという記事らしいものが出た。NHK としては「テレヴィ」と書かなくてよいからほっとするのだろうか。私は、Lと Rの分けて発音することができなくて、rally とか larynx とか、発音する前に緊張する。

そして、今日のエコノミストエスプレッソ(笑)土曜日はやはり一番面白い。今日はウィーンで開催されるマーク・ロスコーの展覧会の話、メキシコのマヤ文明春分を使った描き出す建築と彫刻の奇蹟の話など、どれも面白かったが、FとVの子音を人類が発音するためには、調理をして柔らかい食べ物を噛むようになり、そうするとこの子音を大人が発音できるようになるという。へええ。

ウグイスの囀りとキジの姿

この季節になると、朝にネコのヒラリーが一緒に庭に出ようという。太陽が出て微笑ましい雰囲気になるせいか、ネコが庭を走り回る運動を人間に見てもらいたいせいか、理由はよく分からない。春が進むにつれて、ヒラリーと一緒に庭でコーヒーを飲むことが段々増えてくる季節である。
 
今日は暖かく、ヒラリーと一緒に三人で庭に出て、私たちはコーヒーを飲み、ヒラリーは朝の運動をしていた。そこでウグイスの囀りを聴いた。ウグイスの囀りは非常に何度も聴いているが、姿を見た回数はとても少ない。ウグイスは初冬から早春に我々が暮らしている普通の空間にいる。冬の時期にはジャッジャッという地鳴きをして、主に笹薮で暮らしている。声も小さいし、暮らしが地味である。地鳴きをしているウグイスは2回くらいだけ声を聴いて姿を確認したことがある。早春になると、林などに移動して、しかし止まる場所は相変わらず地面に近い場所で、ホーホケキョ、あるいはケキョケキョという囀りをする。オスのパートナー探しと領域の主張であることもあって、声量も非常に大きい。毎年この囀りはよく聞いている。しかし、姿をみたことは1回か2回くらいしかない。地鳴きとほとんど変わらない。さらに、メスがこの時期に何をしているかは、まったく分からない。うううむ(笑)
 
それからしばらくしてキジの姿を見た。しばらく前にキジの囀りと姿を見た後、毎朝、囀りは聴くが、姿を見ることができなかった。今朝も囀りを聴いてから、念のために双眼鏡を見たら、姿を見ることができる田んぼの中の畑と柿林の土地にいた。地面をつついて、のんびりとご飯を食べながら囀っている感じだった。
 

アメリカにおける奴隷制の廃止と精神医療

historypsychiatry.com

 

アメリカにおいては、精神病院の設立と奴隷制の廃止に至る闘争という二つの時期が一致した。いずれも19世紀の中葉である。そこに着目した著作である。ことにヴァージニアには一般向け(白人向け?)の精神病院とアフリカ系の人々だけを収容する精神病院の二つが別々に設立されている。ことに奴隷制と個人の自由という二つの原則が精神病院でどのように対立し組み合わされるのか。4月になったら研究費で買って読んでおこう。

シンガーの本草学の歴史

チャールズ・シンガーはイギリスで生まれたユダヤ人。父親はユダヤ教の律法博士(ラビ)で、シンガーは医学を学んだ。彼が本草学の歴史について書いた1920年代の論考、特に偽アプレイウス本草学に関する言及を読み、いいセリフを引用することができた。ついでに、シンガーがイギリス科学史学会の初代の会長であったことを利用した論文も読むことができた。

Cantor, Geoffrey. "Presidential Address: Charles Singer and the Early Years of the British Society for the  History of Science." The British Journal for the History of Science, vol. 30, no. 1, 1997, pp. 5-23, JSTOR,  http://www.jstor.org.kras1.lib.keio.ac.jp/stable/4027896.
 
Singer, Charles. "The Herbal in Antiquity and Its Transmission to Later Ages." The Journal of Hellenic Studies,  vol. 47, 1927, pp. 1-52, JSTOR, doi:10.2307/625251.
 
"herbals are quite devoid of any rational basis.  author makes a direct attack on diseases, without any nonsense about theories.  the herbal is thus to be distinguished from the scientific botanical treatise by the fact that its aims are exclusively "practical" -- a vague and foolish word with which, men have sought to conceal from themselves and from others their destitution of anything in the nature of general ideas."    
 
"a herbal is primarily a descriptive drug-list or, as we now call it, a pharamacopoeia."    

 

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 呪』

Hearn, Lafcadio et al. 呪. 汐文社, 2017. 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション / 東雅夫編.
 
東雅夫さんの怪談や奇譚などを集めて注釈をつけるお仕事には、いつでもとても頼りになっている。今回は、子供向けと称して5冊本が刊行された。すべての漢字にルビが付され、何期な言葉や言い回しには詳しい注釈と鑑賞の手引きが施されている。文豪たちが書き記した文章を、年少の読者でも、そのままの形で味読できるようにと工夫されている。私はおバカさんだから、注釈からも非常に多くを学んでいるし、作品の選択からも多くを学んでいる。
 
この注釈というのは、実は見たことがないものである。見開きにしたときの左側に、小さな活字の注釈が集中した部分がある仕組みである。英語の本の本文と脚注が、1ページで上下に並んているのに対し、見開き2ページで横並びになった感じである。これが、非常にいい。岩波の古典大系の古い版は頭注という形式で、これまではそれに慣れていた。しかし、言われてみたら、本文に対する注釈が上についているより左側にまとめられている方がいいのかもしれない。
 
ここに久夫十蘭(ひさお じゅうらん)という作家の「予言」という短編が採られている。とても恥ずかしいのですが、名前を聴いたことがなく、きちんと読んだことがなかった作家です。もちろん非常な傑作です。「予言」は1947年に刊行されており、催眠術を素材にした呪いの物語。これとよく似た中編が「妖術」というタイトルで1938年に公開されているとのこと。「妖術」のほうを読んでみよう。それから、小松左京の「くだんのはは」、三島由紀夫の「復讐」など、いずれもとても面白かったです。これは「呪」だが、「夢」「恋」「霊」「獣」という別の巻も注釈から大いに学びながら読んでしまおう。
 

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表紙も子供向けの本ですが、かなり細かい注も入っていて、大いに学んでいます!