JSTOR Daily の情報をどうもありがとうございました!

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先日 Amelia Bonea 先生に教えていただいた JSTOR Daily のサイト。その会員に無料で登録し、ニューズレターを貰うようになりました。これがとても面白いです。今週は、第二次世界大戦中に連合軍が行ったD-Day の上陸作戦にからめた記事とリンクがある、中国でコオロギを飼う長い伝統と器具がある、ダンスが身体や文化に与える影響についてなどなど、とても楽しい記事への紹介ばかりです。話のネタや、研究のインスピレーションを与えてくれる、面白いニューズレターです。時々メモしたものを書いておきます。ボネア先生、ありがとうございました! 

植物名・動物名の学名としてのラテン語

Stearn, W. T. (1995). Botanical Latin: history, grammar, syntax, terminology, and vocabulary, Timber Press.
Wright, J. a. and L. i. Harper (2014). The naming of the shrew : a curious history of Latin names.
                
植物の学名が謎の一つである。ギリシア神話に基づいてとか、リンネが作ったとか、個人の名前が組み込まれた事例もあるとか、そのような断片的な知識はあるが、プロの研究者の水準には達していない。そんな事情もあって、そのラテン語に関して学ぶことができる大きな本を買った。それが Botanical Latin という書物である。きっちりと書かれた書物で長い人気の書物であり、1995年刊行が第4版である。それに並行するような書物が The Naming of the Shrew で、2014年に出版された。これは軽く読める本である。
 
とても素人なことを伺います。ラテン語の名詞の格変化は、porta, portae, portae, portam, porta そして portae, portarum, portis, portas, portis と変化すると40年近く前に習いました。これが Botanical Latin であると 、accusative が二番目に来て、その次に genitive が来て、それからdative, ablative です。これはなぜ? 

Social Medicine Readerの第3版が出ました!

Oberlander, J. et al. (2019). The Social Medicine Reader. London, Duke University Press.

Social Medicine Reader の第3版が2巻本で到着。第1巻は倫理とバイオメディシンの文化、第2巻は差異と不平等についてという表題を付けている。アメリカで急速な発展を示している社会医学であり、哲学、倫理学、文学についての論文、そして手紙や評論や文芸の実践など、古典的な作品も含まれている。 念のためにHellen Kellerが書いている項目を確認したら、1912年であり、私たちが「ヘレン・ケラー」と書いて想像する人物である一方で、世界の宗教について書いているPeter Brown は初期キリスト教の学者ではなく、別の人物だった。このタイプの教科書を日本語版で作ることも面白いですね。

 

静岡の浮世絵展と疱瘡除けの鐘馗の幟

www.shizubi.jp

 

静岡市美術館で「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」の展示。全体で200点も公開され、鈴木春信の歌舞伎の舞台、東洲斎写楽喜多川歌麿の歌舞伎役者のアップ、北斎富嶽三十六景や諸国名橋、広重の名所江戸百景や東海道五十三次などなど。個人のしぐさ、有名人のポートレイト、江戸の街の様子、旅行先の風景の名所など、とても楽しい。

医学史の研究者としては、喜多川歌麿による「5月5日の端午」を描いた美しい版画の中の「疱瘡除けに朱色で描かれた鐘馗の幟」に熱中した。正月、三月、五月、七月、九月と、5節句の風物を描く5枚続きで、母親、娘、息子の三人が季節性を持つ家庭生活を楽しんでいる様子が描かれる。その5月には鐘馗の幟。これは天然痘が流行したときに、家などに飾ったものと同じ概念である。麻疹の時にも使われたのかもしれない。なぜ5月かという質問はよく分からない。

鐘馗はもともと中国の道教の存在。唐の皇帝玄宗マラリアで苦しむ夜に夢を見て、鐘馗が登場して小鬼を撃ち殺す。事情を玄宗が聴くと、試験に落ちて自殺した官僚候補者だが、高祖皇帝が手厚く葬ってくれ、それに感謝するためにいいことをしているとのこと。(Wikipaedia) そこから病気から守ってくれる力を持つ存在となった。 日本では鐘馗は天然痘か麻疹に対して人間を守る力を持っているものの一つとして発展した。

伊藤, 恭子 and 内藤記念くすり博物館. はやり病の錦絵 : Nishiki-E, Color Prints of Infections. vol. 4, 内藤記念くすり博物館, 2001. くすり博物館収蔵資料集.

北海道大学の実験とブンチョウの親による繁殖行動の教え

土曜日のエコノミストエスプレッソ。今日も楽しい記事ばかりでした。今日の一押しは北海道大学で行われた実験で、ブンチョウがどのように繁殖行動を訓練しているのかという側面。
 
オスがメスに上手なさえずりを聴かせるために、実際にメスがいない場でさえずりを練習して自らを訓練し、うまくなっておいてからメスの前に出て見事なさえずりを聴かせることは、よく知られているとのこと。(私は知りませんでしたけど 笑) それなら、繁殖行動はどうかという点についてはどうか。湖の上のダンスとか、カワセミの巨大な魚のプレゼントとか、行動もあらかじめ練習するのかという問い。
 
これはまだ小さな段階で生殖などしなくていい段階で、両親が教えるのであるという非常に面白い結果が出た。ブンチョウという飼い鳥を利用して、オスもメスのどちらもくちばしを磨くような行動で求愛するとのこと。それが、まだ小さな段階で、親がヒナにこの行為を教えるとのこと。とても儒教的な結果を出したのは、やはり日本の北海道大学の実験チームでした。東アジアの生物行動学であることをいい意味でも悪い意味でも感じますね。
 

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ブンチョウの繁殖行動。
 

二十四節気ー芒種

芒種(ぼうしゅ)。小満夏至の間にある二十四節気。6月5日頃で、今年は6月6日とのこと。
 
芒は「のぎ」のことである。ウィキペディアの説明では、「芒(のぎ)は、コメ、ムギなどイネ科の植物の小穂を構成する鱗片(穎)の先端にある棘状の突起のこと。のげ、ぼう、はしかとも言う。ススキのことを芒とも書くが、これに似たイネ科の植物にオギ(荻)がある。ススキには芒があるが、オギには芒がない」。この説明だけでもかなり難しい。穀物の先端に毛が生えており、そのような穀物の種を撒くということだろう。麦と米については「小満」を書いた頃に悩んでおきました(笑)

初候は「螳螂生」(とうろうしょうず)。小さなカマキリが生じてくるとのこと。家ではまだカマキリを見ていないが、実佳が静大で見たとのこと。この時期に小さなカマキリが発するというのは、その通りだろう。
 
そして次候と末候が絶望的に難しい(涙)次候は「鵙始鳴」(げきはじめてなく)。鵙というのはモズであり、この時期にモズが鳴きはじめるとのこと。鳴きはじめる時期かどうかはよく分からないが、モズがいるのは事実である。末候は「反舌無聲」(はんせつこえなし)である。「反舌」はモズのことであり、モズが鳴き止めてしまうという意味である。たった数日で、鵙が鳴きだしてから、反舌が泣き止むということは、事実と違うというか、バカバカしい仕方で事実と違う話になってしまう。鵙と反舌が違う鳥であると考えるとなんとかなるのかもしれないし、イラストで見ると確かに違うような気もするが、反舌のイラストは確実にモズであり、それを「ウグイス」と考えることは、バカバカしい過ちである。しかし、ウェブで「反舌」をひくと、中国語の「反舌」をたくさん拾うことができて、画像で見るとどれもモズではない。何が何だか分からなくなる。ううううむ(涙)

「図書館情報学と医学」-『週刊 医学界新聞』最新号より

『週刊 医学界新聞』に新しい連載である「図書館情報学の窓から」が始まった。佐藤翔先生という方が、ある意味で歴史的な手法で始まった。図書館情報学は、原子爆弾計画・マンハッタン計画に一つの起源をもつという議論である。とても面白そうだし、引用されているご自身の論文を見てみよう。