慶應日吉の「文理連接のプロジェクト」。第三回の動画や原稿などをアップしました!

lib-arts.hc.keio.ac.jp

 

慶應義塾大学・教養研究センターの基盤研究の一つである「文理連接プロジェクト」。6月25日に行われたものが公開されております。第一回から第三回までの研究講演に関して、動画、原稿、PPT、文献案内なども公開されております。ぜひご覧くださいませ!

7月6日に日本病跡学会で講演をいたします!

www.kuhp.kyoto-u.ac.jp

 

今週末に京都の龍谷大学で開かれる日本病跡学会。7月6日(土曜日)の夕刻に特別講演をいたします。タイトルは「精神医療の構成体と<創作>-戦前期東京の精神病院の症例誌を読む」になります。

今回の講演の主たる対象は、患者が手稿に残した自伝と回想の中の<夢>の分析です。この自伝には数多くの画像が添えられていますが、今回は、患者が星の世界に旅行する夢の画像を見ていただき、その中で、日本の精神医療に関する幾つかのポイントを提示したいと思います。まだ自信を持って提示できる議論ではありませんが、いらしていただければ幸いです!

 

大正期の長崎医科大学と九州医科大学における医学史の講義

飯塚友一郎. (1930). 演劇と犯罪, 武侠社.

昭和5年頃に出版された犯罪科学論を読んでおこうとして、三田から取り寄せて読み始めた。精神医学者や法医学者などと並んで、評論家たちも書いている。その中で、私が本を読んだことがなかった飯塚友一郎というかなり著名な演劇評論家がおり、彼が『演劇と犯罪』という書物を書いている。そこに、偽医者として活躍した人物の紹介がされている。この時期の日本の大都市で偽医者が引き起こす問題はとても面白い。

昭和4年に本郷本富士警察署に長谷時次郎という32歳になる男性が逮捕された。佐賀県に生まれ、中学3年まで修めて上海に渡り、その後フランス、ドイツ等を経て、大正12年6月に長崎に戻ってきた。長崎医科大学の学長に取り入って大学で講義をし、九州医科大学でも講義をしたという。

その時期に、長崎在住の某公卿華族令嬢との縁談を持ちかけて、話が進んだが、同女の親権者の印鑑を偽装したため、同年11月に長崎刑務所に収容され、13年2月に放免された。このあたりのメカニズムが私にはよく分かっていない。

長崎から出所後も、医師に化けて無免許開業していたので、また検挙された。昭和4年の3月に、長崎控訴院で1年6か月の刑を言い渡されたが、保釈のまま逃走し、その足で東京に現れた。そして、本郷湯島の医業協会に、某医学博士の偽紹介状で医学士・島義雄と偽名して住み込んだ。さらには、5月には府下中野の某医院の新聞広告に応じて、帝大医学博士斎藤正敬の名で乗り込んだ。同時に某女と結婚紹介所の手で結婚同棲したが、そのうちに、女から数百円を巻き上げて7月には置き去りにして出奔した。

次いで九州大学での斎藤博士の名を騙って、女高師出の某女学校教師と結婚し、自分は病院に勤務し、その間に九州大学に問い合わせて本物の斎藤博士の身元や論文等をことごとく調査して、すっかり自分が同博士になりすませて、府下に一戸を構えた。やがて足元があぶなくなると、今度は伝手を求めて、第一外国語格好に有吉男爵と称してドイツ語を受け持っていた。

同人はドイツ語だけは天才的に巧妙で、それを武器として、かくも各所を化け通してきたと言われている。ドイツ語がたくみかどうかで偽医者になることができるということも憶えておこう。

皆様はだいたい見当がついていらっしゃると思う(笑)実はこの人物は、講義として医学史を教えたごく初期の人物である。ドイツでドクトール・メディチーネの学位を得た如くに装って、長崎医科大学の学長に取り入って、同大学で講義をしばらく続けた科目は医学史であった。同じ時期に九州医科大学へも出張して講義したという。おそらくこれも医学史の講義であろう。1923年の6月から11月までの5か月間に、何らかの形で偽医者による長崎と九州で医学史の講義が行われていたことが分かる。

メモしたほうがいいのか、忘れたほうがいいのか(笑)、よく分からないけれども書いておく。

1980年代の日本の嫌煙とアメリカの嫌煙

Milov, S. (2018). "Smoke Ring: From American Tobacco to Japanese Data." Osiris. 33(1): 319-339.

アメリ科学史学会の年刊の機関誌である Osiris の資本主義と科学の特集号。私は資本主義の概念を使うことができないが、いまは色々な使い方を勉強している。その中で、1980年代に日本で起きた嫌煙運動とアメリカで起きた嫌煙運動の比較がとても面白いのでメモ。経済と情報の国際的な流れを分析する手法である。

アメリカの喫煙反対運動の一つの柱が、日本人の医師でがんの研究者である平山雄(ひらやま・たけし 1923-1995) がイギリスの雑誌に投稿した受動喫煙の論文である。これが取り上げられて、アメリカの喫煙反対運動が大きな力を得たことが知られている。一方で、この論文で初めて知ったことであるが、日本のたばこ産業は、1960年代からはアメリカで生産されたタバコの葉を積極的に取り入れていたという。1956年から68年まで、日本がアメリカから輸入するタバコは700%も増加したという劇的な上昇を見せていた。国際的にみると、アメリカのタバコが日本で消費され、日本の研究者が生産した受動喫煙の情報がアメリカの社会が利用したという。喫煙と嫌煙の売り買いが両国の間で成立して、日本の嫌煙運動が離陸するのに非常に時間がかかった理由がわかりました(笑)

平山雄については、日本のウィキペディアアメリカのウィキペディアの双方が記述を持っている。後者は英語のマテリアルしか使っていないのに、日本語のものよりもはるかに充実している。これも日本の医学史が発展するとすぐに充実するだろう。

安元先生にご著作を頂きました!

安元先生に『イギリス歴史人口学研究ー社会統計にあらわれた生と死』(名古屋大学出版局、2019) を頂きました。ご体調が一度悪くなられましたが、そこから復活して書かれた大作であるとのこと。すごいです。

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イギリスの歴史人口学の著作をいただきました。必要になったので、概論をもう一度勉強します。ありがとうございます!

 

坂野先生に『島の科学者』を頂きました!

坂野先生に『島の科学者』をいただきました。ミクロネシアコロール島に存在したパラオ熱帯生物研究所の緻密な研究です。次に人種論を書く折には丁寧に読ませていただきます!

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緻密な研究で美しい表紙の書物ですね。

 

商業的捕鯨の問題

日本が捕鯨の商業化を実施するためにIWC (International Whaling Commission) を離脱した。これまでは科学的な捕鯨だけが許されるという形で、調査のために行い、調査をしてもあまった分に関しては、料亭やスーパーで出していたという。難しい問題だけれども、私は捕鯨そのものにわりと反対であるし、調査した結果あまった部分を料亭などで使うという発想と実践が、とても日本的ですごく嫌な気分になる。クジラやイルカなどが非常に賢いという大きな原理はまったく変わっていない。ブタやウシはどうなのかという議論をすることも、日本が盛大にブタやウシを食べているときに、どう成立するのかもよくわからない。

エコノミストも日本に困惑している。クジラは日本の肉類の消費の0.1%で、企業としては小さい会社で合計して300人の人々しか雇っていないという。ただ、これを行うのが日本の領海であることになった。南極の海で捕鯨してオーストラリアと揉めるという形式がなくなったと考えていいとのこと。

Harpoons away: whaling


Whale-hunting ships depart from several Japanese ports today, ending a three-decade ban. The country stopped killing whales for profit in 1988 after a moratorium was introduced by the International Whaling Commission. Since then, Japan has relentlessly lobbied to reverse the ban, which environmentalists consider one of their biggest victories. Its withdrawal from the IWC—its first from an international body since the second world war—has been widely condemned. Yet it could be a blessing in disguise. Japan’s “scientific” whaling in the Antarctic, the source of much tension with its international allies, will end. Commercial hunts will be conducted only in Japanese waters, subject to a quota set by the government. Many in any case question whether the whaling industry can be revived. It has shrunk to a handful of small companies employing barely 300 people. Most Japanese show little appetite for whale, which accounts for 0.1% of the nation’s total meat consumption.