南米の幻覚性植物とシャーマニズム

永武先生の南米のシャーマンと幻覚性植物の写真集を少しゆっくりと見た。ジャングルや高地の密林などの植物がシャーマンによって用いられている。これはアメリカ大陸古来のもので、おそらくその大部分は、石器時代のシベリアのシャーマニズムから引き継いだものである。シャーマンは日常に経験する世界と、精霊たちの聖なる世界との結び手である。自分の共同体のために、意識の変性状態に入り、スピリチュアルな次元と交信する。

この精霊世界と交信するための重要な手段が、ユーラシアでは伝統的には聖なる太鼓だったが、アメリカ大陸では向精神性植物であった。タバコを筆頭として、コカ、アサガオ、ダツラ、ペヨーテ、シロシピン、サボテンの一種であるサンペドロなどが用いられている。サンペドロはメスカリンを含んでる。アマゾン地方にはいると、さらに多種多様な向精神性植物が使われている。もっとも有名なものはアヤワスカである。密林の蔓を想像するといい。それにいくつかの植物を混ぜてつくる。

答案の採点と『絵で見るドイツ語』『絵で見るフランス語』

今日は新幹線で答案の採点をした。ちょっと久しぶりで、妙に懐かしかった。これからは語学勉強のための本を新幹線で読もう。大学生・大学院生の頃に習慣だったから、ものすごく懐かしくなるに違いない。私が古本で買ったのは300円くらいの一冊の本だけのヴァージョンで、CDなどの音声ソフトはついていない。あの頃は文字と音声の対比が哲学系の議論の一つでしたね。なんか、もう懐かしがっているのですが(笑)、フランス語環境の粋さとドイツ語環境の秩序の対比が楽しいですね。

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古本で買ってみました。

 

南米のシャーマンと薬物について

永武, ひかる. (1995). マジカル・ハーブ : 南米の幻覚性植物とシャーマニック・ヒーラー, 第三書館
永武, ひかる. (1996). アマゾン漢方, NTT出版.

ペルーアマゾン、アンデスに潜む植物のスピリットを、迫力のカラー写真で紹介。

1 アホ・サッチャのまじない
2 アンデスの秘儀
3 アマゾンの呪術師と神秘の植物アヤワスカ
4 密林ハーブガイド
5 ハーブからエコロジー

 

中南米シャーマニズムは幻覚性植物との結びつきが非常に強い。まだきちんとした学術的な書物を読んだわけではないが、最近読んだ二冊の入門者向けの書物から抜き書きをはじめた。中国と同じであるという「アマゾン漢方」というタイトルと、仏教やタオイズムの正反対であるという、まったく異なる。

南米のシャーマニズムと薬用植物のベースになっている植物の世界を記録する必要がある。シャーマンや呪術師の技術やビジョンは、非常に捉えにくく、主観的なものであり、かつ文化的な背景に埋もれているという。シャーマン世界の本質は目に見えない。つまり<力>のある植物に含まれる高精神性物質が、不思議な精神状態やまったく道のシナリオをもたらし、常に変化し続けながらも、現出するものが真実であると強く感じさせるためである。このような経験は、シャーマニズムが息づいている社会ではごくあたりまえのことで、シャーマンは、宗教的エクスタシーをともなう内なる旅を通して、英知や真実の知識を得るのである。その隠された伝統を引き出すのが、幻覚性植物を通じて与えられる、世界をつかさどるものや、森の精霊によって差し出される恵みである。

シャーマンによる内面世界へのアプローチは、仏教やタオイズムの黙想的なアプローチとほとんど対極にある。これらの無我の境地にいたるアプローチは、心の動きを静止して、すなわち清浄と平静をもたらし、現実世界の執着を解き放つ。しかし、本書の素晴らしい写真に見せられるシャーマンのアプローチは、まったく異質のものである。先祖代々継承されてきた混沌として一種芝居のような手法であり、各地の伝統的な土着植物に含まれる自然界の幻覚性物質による精神的・身体的な作用に基づいている。

シャーマンの知識や力は、その植物の体験から得られるので、シャーマンの世界と植物の世界は分断あれることのない、ひとつの連続体である。

『「患者」の生成と変容ー日本における脊髄損傷医療の歴史的研究』を頂きました!

立命館大学の坂井めぐみさんより、『「患者」の生成と変容ー日本における脊髄損傷医療の歴史的研究』を頂きました!幕末から現代までの日本における脊髄損傷者と医療の関係を分析した書物です。ご自身が脊髄損傷者であり、その視点から長い歴史をとらえた博士論文とのこと。落ち着いて読ませていただきます!

 

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坂井さんの脊髄損傷の医療史。自身が患者であると同時にその歴史を書いた博士論文です。ゆっくり読ませていただきます!

 

doggo adv.と絵で見るドイツ語入門

www.oed.com

 

OEDで今日の単語は doggo であった。語源はシンプルに dog で、犬が這いつくばって静かに寝ているような感じで、人間が腹ばいになる、あるいは静かにしている感じの副詞である。lie doggo か play doggo という形をとる。下に文章を並べて置いた。
 
今回のリサーチは日本人が手書きしたドイツ語を読む。これはそこそこの熟練が必要だけれども、最終的には日本語の中にドイツ語をまぜこんだ医学的方言だから、それほど難しくない。「昨年12月中頃から年末まで Erkaeltung で休学していた」という感じである。Erkaeltung というドイツ語を調べればいいだけである。その準備のためにドイツ語を再び学習している。絵で見るドイツ語という本で基本の300語くらいを学ぼうという本も買ってみた。
 
1882   Sporting Times 25 Mar. 5/3   He had been a guest, after lying doggoh for some time, at one of Blobbs' quiet little suppers.
1886   Time Dec. 684   ‘Sharks abroad. Breakers ahead. Benjamins on the war-path. Lie doggo. Joe.’.. ‘What's the meaning of it?..And what is “lying doggo”?’
1890   R. Kipling in Pioneer Mail 28 May 698/1   The other subaltern lay doggo in camp.
1893   R. Kipling Many Inventions 259   I wud lie most powerful doggo whin I heard a shot, an' curl my long legs behind a bowlder.
1914   Strand Mag. July 89/2   You'll play doggo and keep out of sight. She'll just have to concentrate on me.
1945   H. Pleasants From Kilts to Pantaloons 100   He..knew that he would catch hell..if he were discovered. Accordingly, he..tried to play doggo at his desk.
1955   F. Maclean Back to Bokhara iii. 136   Lying doggo with an expression of angelic innocence when he came to see if she was in bed and asleep.
2002   G. K. Watt Rebellion in Mohawk Valley vii. 168   Instead of shooting, simply lying doggo proved the salvation of many militiamen.
 
 

アスパラガスのこと

* 草川俊. 野菜・山菜博物事典. 東京堂出版, 1992.
* 羽根田, 治. 野外毒本 : 被害実例から知る日本の危険生物. 山と渓谷社, 2014.
* Arber, Agnes Robertson. Herbals : Their Origin and Evolution : A Chapter in the History of Botany, 1470-1670. 3rd edition, Cambridge University Press, 1986. Cambridge Science Classics.
* Everett, Nicholas and Galen. The Alphabet of Galen : Pharmacy from Antiquity to the Middle Ages. University of Toronto Press, 2012.
* Gerard, John et al. Selections from the Herball, or, Generall Historie of Plantes : Containing the Discription, Place, Time, Names, Nature, & Vertues of All Sorts of Herbes for Meate, Medicine or Sweet-Smelling Use, Etc. Velluminous Press, 2008.
* Pliny. Complete Works of Pliny the Elder. Delphi Publishing, 2015.

 

少し自由な時間が取れたので、植物学辞典やマテリア・メディカを読んだ。今日はアスパラガスの日。

 

アスパラガスはとても好きな野菜である。昔の缶詰ホワイトアスパラガスは高価だがそれほど好きでなく、今のグリーンアスパラガスの方がずっと好きである。苦そうな風味、それぞれの部位で異なる硬さ、それから食べた後の自分の尿が独特の高い香りを持つこと。まさしく本当にガレノスそのものの薬材である植物である(笑)ラテン語の対訳を読むと、温かくすること、排尿させる力を持ち、硬化した部分を柔らかくできるということが書いてあり、四大性質や四大元素の概念で観察されている。しかし、種と根が薬となるといい、私は種を見たことがない。ジェラードの本のイラストを見るとたしかに先端に種となるものがあり、赤くなるとのこと。プリニウスによると栽培がかなり難しいとのこと。

草川によると、日本で最初に導入されたのは北海道であり、缶詰のホワイトアスパラガスをつくるために1923年に北海道の岩内町で栽培を始めた。薬とは全く無縁である1940年には2,000ヘクタールで栽培していたという。1980年には6,400 ヘクタール。この時期は北海道の全盛期のようだが、新しいウェブサイトをみると、北海道は一位ではあるが、収穫高では14%であり、長野の11%と佐賀の10%とかなり近い。全体で5,000ヘクタールを少し超えるくらいである。

二十四節気の小暑

今日は7月7日で七夕の日。この時期はアメリカ独立やフランス革命など歴史的な祝日も多い。二十四節気でいうと、「小暑」(しょうしょ)が毎年7月7日に始まることも知る。
 
節気で暑さ寒さがそのまま表すものは、小暑大暑処暑小寒大寒の五つ。暑気に入るが、次の節気の大暑に対して暑さはまだ最高ではないという意味である。夏至を過ぎて、昼の長さはほんの僅かながらも短くなったとはいえ、気温は次第に上昇しつつある。
 
初候は「温風至」(うんぷういたる)。これは「温」と書くが、暑い風の意味である。これを「涼風始至」と書くシステムもあるが、7月7日に涼風が始めて吹くというのは分からない。日本では貞享暦と宝暦暦では「温風」と書き「うんぷう」と読まれているが、明治7年には「温風」と書くが「あつかぜ」という訓読みである。現在では「うんぷう」に戻った。
 
次候は「蟋蟀居壁」(しっしつかべにをる)。「蟋蟀」は昆虫だが、きりぎりす、こおろぎ、かまどうまのどれかという議論もあるという。壁でなくかというより、網戸にこちらを腹を見せていることが確かにある。
 
末候は「鷹乃学習」(たかすなわちがくしゅうす)。今年生まれた鷹の幼鳥が巣立って大空に舞い上がる時節。親鳥に飛び方を学ぶことを指す。
 
古い暦はここで「木槿栄」(もっきんさかふ)を使っている。木槿ムクゲのこと。これが朝に開いて夕方にしぼむ。しかし、花は次から次へと咲き、花期はかなり長い。開いてしぼむというリズムよりも、いつも咲いているという長期の印象がある。