中国の世界思想(コスモロジー)の発展と衰退についての教科書
売春と男性・女性の「被害」と精神疾患
Enloe, Cynthia. Does Khaki Become You? (1983)
昭和戦前期の精神医療が、警察や社会の影響のもとで機能した側面に、売春の影響という非常に大きな領域がある。実際、症例誌を見ていても、男性が買春から発達させた精神疾患となった客は数割はいるし、売春婦は数は少ないが、確かに存在する。これは公費でも私費でも存在する。特に、この時期はまだ梅毒が精神医療の世界で非常に大きな力を持っていて、男性客の数が多かっただけでなく、女性患者にも梅毒の被害者は多いし、売春婦に患者が多いことも分かる。この部分を取り上げてみよう。
売春と精神医療は、非常に多数の研究書があって、しばらくこれらを読もう。今回は19世紀から20世紀後半の軍事と経済の背景で、植民地や貧困な農村部の問題を論じた書物である。アメリカやイギリスはもちろんのこと、日本や、皮肉なことに韓国も、他国の女性や、自国の貧しい女性が、国家や軍の男性との売春に取り込まれたことを生き生きと論じている。日本では「からゆきさん」やサンダカン8番娼館のような話である。
二十四節気の大暑
ロンドンに行っていた時期に気がついたけれど、先週の木曜に二十四節気の大暑が来ました。岡田『アジアの暦』も手元にはなかったし、クラウドで読むことが出来ると、便利だなと思います。
大暑は立夏から始まる夏の六節気の最後。冬が大寒で終わるのと同じように、夏と冬のいずれも、もっとも厳しい気候で終わり、それから涼しさと暖かさに転じる仕組みだろうが、実際の気候とは一致しない。陽が極まって陰に転じるというモデルと、そこまでを夏と呼び、まだ暑さが残っている時期を秋と呼ぶ仕組みが、多少の違和感がある。
初候は「腐草為蛍」(ふさうほたるとなる) 川辺の腐った枯草が蛍に変じ、夢幻のような光を発するという。次候は「土潤溽暑」(つちうるおいじょくしょなり)。大地は水分をたたえ、気温も高騰するという。末候が「大雨時行」(たいうときにいく)。大雨が水蒸気となり、時々滝のような夕立が涼しさをもたらすという。
二十四節気の大暑
ロンドンに行っていた時期に気がついたけれど、先週の木曜に二十四節気の大暑が来ました。岡田『アジアの暦』も手元にはなかったし、クラウドで読むことが出来ると、便利だなと思います。
大暑は立夏から始まる夏の六節気の最後。冬が大寒で終わるのと同じように、夏と冬のいずれも、もっとも厳しい気候で終わり、それから涼しさと暖かさに転じる仕組みだろうが、実際の気候とは一致しない。陽が極まって陰に転じるというモデルと、そこまでを夏と呼び、まだ暑さが残っている時期を秋と呼ぶ仕組みが、多少の違和感がある。
初候は「腐草為蛍」(ふさうほたるとなる) 川辺の腐った枯草が蛍に変じ、夢幻のような光を発するという。次候は「土潤溽暑」(つちうるおいじょくしょなり)。大地は水分をたたえ、気温も高騰するという。末候が「大雨時行」(たいうときにいく)。大雨が水蒸気となり、時々滝のような夕立が涼しさをもたらすという。
日本のゆるかわ美術と精神疾患の患者の描画
『芸術新潮』の最新号が日本のゆるかわの特集である。 直接的な背景にあるのが三井記念美術館の「日本の素朴絵ーゆるい・かわいい・たのしい美術」である。これらの作品は個人的には好きでも嫌いでもないが、めくってみると、とても面白い。自分の専門の研究上で、同じような描画が焦点になっている。絵画でいうと、松沢病院に収容された画家が、ピネルの狂人解放の絵のイミテーションなどを描いた例が、どう捉えていいのか分からないくらいのぶっとんだ感じがあるが、現実に描かれているもののほとんどが、ずっと「素朴な」絵画である。
これは文学についても同じことが言える。もともと傑出した文学者で、精神疾患が現れた時にそこに狂気が現れるタイプの作家がいる。モーパッサンや太宰治や芥川龍之介がそうだろう。しかし、それらは例外タイプで、ほとんどの例が、どうにもならないほど凡庸な作品である。文章自体がぐずぐずである。これを「素朴な」と呼べるのか、まあ、そのようなことを考えてみよう。
Hypericum とオトギリソウ
家で Gardens を読んでいたら、Hypericum の特集があった。日本語でいうとオトギリソウにあたる。黄色の鮮やかな色だが、西洋でも日本でもいずれもかなり強力な薬効があるとされている。以下は日本大百科全書からの引用。ジェラードによると、セント・ジョンズ・ウォートは、血液の色である赤い汁を持ち、血液に関した傷などに対する強力な薬であるとのこと。民俗学者たちによれば、そこに悪魔との闘いという主題、恋と結婚という主題など、非常に強い特徴を持っている。日本においても、秘伝の薬の意味合いが強い。オトギリソウの仲間にビヨウヤナギがある。
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ヨーロッパでは中世から最近まで聖ヨハネの祝日に薬草を集める風習があり、重要な年中行事の一つとして中夏節の祭りという。イギリスでは薬草として用いられるセイヨウオトギリソウを「聖ヨハネの草」St. John's-wortとよんでいる。6月24日の聖ヨハネの祝日は夏至のころで、太陽がもっとも強い時期であり、オトギリソウが黄色の花をつけるころでもある。この日の前夜に集めたものがとくに中夏節の薬草として効力が強いとされ、病気をもたらす悪魔を追い払う草としていた。
また豊作を祈るたき火をこの日に行う風習があり、恋人たちもこの祭りを楽しんだ。中夏節前夜にこの草を枕(まくら)の下に敷いて眠ると娘たちは未来の夫の夢をみると信じ、壁にかけた小枝が朝までしおれなければ結婚相手は吉と占った。また中夏節前夜に騒ぎ回る悪魔たちの災いから逃れたり、落雷よけのために家の戸口や窓にこの草をつるす風習もある。
[杉山明子]
弟切草という物騒な名は、寺島良安(りょうあん)の『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(1713)によれば、花山(かざん)天皇(在位984~986)の代に、鷹(たか)使いの名匠晴頼(はるより)が鷹の傷を治すための薬草を秘密にしていたところ、それを弟が漏らしたために切り捨てたことから名づけられたと伝える。古くから薬として知られ、青薬(あおぐすり)の別名もあり、藤原定家は「秋の野にまだ枯残る青薬 飼ふてふ鷹やさし羽なるらむ」と詠む。また貝原益軒は『大和本草(やまとほんぞう)』(1709)で、雑草の項に分類し、切り傷の止血のほか、鷹と犬の病を治すと記す。現在でも陰干しにした全草を煎(せん)じてかぜや咳(せき)止めの民間薬に使い、焼酎(しょうちゅう)につけて薬酒をつくる。
[湯浅浩史]
葉からしぼった汁は打撲傷、切り傷の薬とし、煎(せん)じた汁は止血、うがい薬とする。また、茎、葉から製するオトギニンは関節炎、神経痛などに効く。漢名、小連翹。学名はHypericum erectum 《季・秋》