池波正太郎とSMと万引き中毒症

松竹の歌舞伎の会の月報の『ほうおう』。11月号を読んでいたら、1977年に初めて書かれて初演された歌舞伎の作品が、江戸時代に起きた現象としてサディズムマゾヒズム、そして万引きに依存し続ける人格を論じているという面白い記事があったのでメモ。著者は池波正太郎で、後には時代小説家として有名になった。鬼平犯科帳(おにへいはんかちょう)などは、タイトルは聴いたことがあるし、非常に有名であることも知っているが、残念ながら一度も読んだことがない。池波のエッセイの中では『アンソロジー そば』の冒頭の作品しか読んだことはない。この作品は、理屈とか議論とか実証とか、そんなことは一切無関係にして、東京のそばの魅力を語る短編である。
 
その池波が『市松小僧の女』という歌舞伎作品を描き、1977年に歌舞伎座で上演された。彼自身が演出をして、人間味にあふれる作品であるとのこと。それと、どのように両立するのかよく分からないけれども、『市松小僧の女』では、江戸時代の男と女がサディズムマゾヒズムと万引き依存症に溺れるありさまが描かれているように見える。ちょっと興味を持って調べたら、池波の初期の作品には「檻の中」という短編の戯曲もあるとのこと。これも読んでおこう。

“Review of Eye Eye Nose Mouse and Reflections on Psychiatry and Art in Japan” is just published.

I had an interesting virtual meeting with editor of Japanese and Chinese mental patients’ artworks at Harvard several months ago and wrote a review of the catalogue, as well as some reflections on psychiatry and art in Japan in Creative Arts in Education and Therapy. The Harvard exhibition is strikingly innovative. At the same time, use of traditional themes and subjects in the ancient and medieval period for modernization of Japan in the twentieth century was also one of the driving forces of modern psychiatry and art in Japan. You can read my review here.

http://caet.inspirees.com/caetojsjournals/index.php/caet/article/view/179

 

『オリエント急行殺人事件』

ケネス・ブラナーが主演して監督した映画『オリエント急行殺人事件』を観た。映画公開が2017年だったこともあって、観るのが2年くらい遅れた感じがします。

年をとった俳優は私が好きな役者たちばかりだし、若手の役者も、初めて観るが注目する人が多くてとても良かった。演出も、最後のあたりで、12人の登場人物がずらりと並ぶ部分などは面白かった。

議論が分かれるのは、原作との差である。基本は同じようなストーリーだが、それぞれの登場人物がかなり変わって設定されている。この映画の方が良いケースもあるし、映画になると良く分からなくなる大きなものもある。

一番好きな書き換えは、1930年頃にバルビツールで麻薬中毒になってしまったと書き換えられた妹さんですね。美しい麻薬中毒の映像を初めて見たのかもしれない。

 

クリスチャン・サイエンスの宗教的心理療法

アメリカのキリスト教系の宗教的心理療法、あるいは民間心理療法の本を読んだことがないことに気がついたので、kindleで100円くらいで買って読んで見た。Mary Baker Eddy が1875年に刊行した Science and Health with Key to the Scriptires である。文体に慣れるのに少し時間がかかるが、キリスト教の説教をしているような流れを思い出してからは、良い感じで読めるようになった。

 

ただ、それと私が賛成するかどうかは全く違う話である。でも、彼女が下剤と薬物を小馬鹿にしていて、下剤をすると脳に変化が起きて精神病が治ると考えるのは、そっちの方がちょっとした狂気よねというセリフは面白かった。だから宗教をすると治ると考える人々が、確かに19世紀のヨーロッパの中産階級には多いように思う。

 

スミソニアン博物館よりPTSDと心理テストの歴史

www.smithsonianmag.com

 

スミソニアン博物館から面白い記事のメール。第一次世界大戦PTSD について。さまざまな写真や文書が残っています。日本でもこのような事例に対応する文書やできれば写真などを収集して国際的なデータにすることが一つの目標になりますね。

 

環境問題とケニアのシロサイの救い方

www.economist.com

 

エコノミストの地図利用コーナー。今週は世界の絶滅危惧種について世界地図で表現している。危険なゾーンはやはり熱帯に多く、東南アジア、ブラジル、そしてインドの東北部などに多い。また、温帯においても、数十年レベルでの劇的な変化が起きている。北米では鳥の数がこの50年ほどで、三分の一激減したという。

現在の野生動物で最も絶滅の危機に瀕しているのはケニアのシロサイ。野生の北部のシロサイはわずか2頭で、そのどちらもメスであるという。仕方がないので、チェコの動物園で飼われているオスのシロサイから精子をもらい、それをメスの卵子と人工授精して野生に戻しているとのこと。ううううむ。

 

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Creative Arts in Education and Therapy に Essay Review が掲載されました!

caet.inspirees.com

 

ネット上でお声を掛けられて書評を書くことになりました。基本的にはハーバードで行われた中国と日本の精神病患者による芸術作品の展覧会の評論です。私の専門からは多少ずれますが、能や歌舞伎などの日本の伝統芸術における狂気の表現が、近現代にどのように発展したかなどの問題にも触れながら論じました。PDF か HTML でご覧ください。Tony Zhou 先生、Shaun McNiff 先生などにも多くの点で助けられました。お礼を申し上げます。

 

Through a virtual meeting on the internet, I have just published an essay review in a journal, Creative Arts in Education and Therapy. The review is prompted by "Eye, Eye, Nose, Mouth," an exhibition of artworks of patients in China and Japan organized at Harvard.  I have touched the traditional expression in Noh and Kabuki, as well as their developments in the twentieth century.  The website has both PDF and HTML.  I have been helped by Professor Tony Zhou and Professor McNiff to make the review much better.  My deep thanks to them!