医学史と社会の対話―歴史(医史)研究と社会との接点 /尾﨑 耕司(大手前大学)

bit.ly 明治維新以降の日本の近代医療の形成は、世界の非西欧圏の近代化の中でも、特徴があるユニークなものです。正統医療であった中国医学を学んでも、それだけでは新規に医者になれなくなったこと。近代的な公衆衛生の模範であったイギリスではなくドイツ…

サーカス250周年の夢

www.youtube.com 2018年はロンドンでサーカスが誕生してから250周年とのこと。色々な行事がロンドンと世界で開かれるのだろう。今、多くの著者たちが本を書いているだろうから、それも読もう。きっと楽しいだろうと思う。 先日大学院生と昼食を食べながら、…

プシコナウティカの会 磯野真穂/兵頭晶子/藤原なおみ

プシコナウティカの会。今回は磯野真穂さんの書物を兵頭晶子さんたちが評論する会とのこと。私は別の学会で出席できませんが、ぜひお出でのほどを。 ********* 第10回 プシコナウティカの会 ********* 日 時 2017年11月11日 (土) 13:00~17:00 場 所 目黒区…

明治の精神病女で岡倉天心の愛人であった星崎波津子の「巣鴨病院再入院申請書」は贋造書類なのか?

松本清張. 岡倉天心 : その内なる敵. 河出文庫. 河出書房新社, 2012. 南富鎮. 松本清張の葉脈. 春風社, 2017. 星崎波津子という人物がいる。もともとは花柳界の出身で、結婚は文部官僚で貴族院議員となった九鬼隆一に嫁ぎ、哲学者の九鬼周造の母である。九鬼…

Buddhism and Medicine 新刊のアンソロジー

amzn.to Buddhism and Medicine: An Anthology of Premodern Sources が刊行された。仏教と医学に関する重要なテキストの英語訳と指導的な学者による説明と聞いている。評者も素晴らしいコレクションだと絶賛している。Kindle で16,000円以上とさすがに高価…

新しい「精神医療時代の芸術」の時代へ:坂本葵さんの評論

bit.ly 9月9日に松沢病院で開催した「精神医療と音楽の歴史」の講演部分を、作家の坂本葵さんに論じていただきました。高林陽展先生(立教大学)と私の、精神医療の歴史に関する講演でしたが、坂本さんの評論からは、学問的に、そして時代の方向を考え直すう…

展覧会「コンニチハ技術トシテノ美術」について

せんだいメディアテーク 「コンニチハ技術トシテノ美術」は、せんだいメディアテークのギャラリーでの展示。11月3日に始まり、12月24日まで開催されます。青野文昭、飯山由貴、井上亜美、高嶺格、門馬美喜の5人のアーチストの作品が展示されます。ウェブサイ…

『ボブという名の猫―幸せのハイタッチ』

bobthecat.jp 土曜日のワークショップでの話しと授業の準備。意外に早く済んだので、午後に、実佳と一緒に映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』を観に行く。ロンドンのヘロイン中毒のストリートシンガーと、彼のみじめな生活にやってきて立ち直りを助…

小さな疑問―この上着は何ですか?

黒田清輝が1909年に描いた寺尾寿(てらお ひさし 1853-1923) の肖像画。寺尾は福岡出身の天文学者・数学者。パリ大学に留学して天文学を学び、東大で天文学を講じて東京天文台の初代台長となった。日本の官僚や経済の名家と深い関係を築いた。黒田がフランス…

大英博物館の会員誌と<記憶の有罪判決>

博物館や美術館の会員になるのが好きだから、大英博物館の会員にはもちろんなっている。特別展に無料で入れるのがメリットだろうけれども、楽しみなのは年に4回刊行される季刊誌である。今回はもちろんスキタイ展の読みごたえがある記事がある。他にもいい…

ケアの神話

昨日書いたクリステヴァのマテリアルから、まず神話を見つけて、それに関するメモを書いてみた。ハイデガーとクリステヴァも挟み込んだヴァージョンも書いておこう。 ******* ケアという言葉をよく耳にします。日本語では看護や介護といったような、もともと…

クリステヴァの分析:人間の創造の神話と医療における人文学

Cultural crossings of care: An appeal to the medical humanities | Medical Humanities BMJ の Medical Humanities より、面白い論考を全部読めるプレゼント。ファースト・オーサーはジュリア・クリステヴァ。私が若いころには神話的なステータスを持った…

新療法が全く効かない事に関する論文(昭和7年)

医学論文を読むと、新療法が出てきてうちの研究室でもやってきたらこうだったという追試の論文をよく読む。すごく効くとか、まあまあだとか、そんな感じの論文を数限りなく読んできた。今回、生まれて初めて、新療法がまったく効かなかったという論文を読ん…

精神病院の患者の診療録(19世紀末)を読んでの詩作

A visit to Brookwood Aslyum in the 19th century | Medical Humanities イギリスのサリー州のブルックウッド精神病院の記録が整理されて目録が公開されている。このような体制を日本でも作り上げて、水準が高い医学史研究ができるようになることを私たちは…

アノイリナーゼ菌と新潟医大のツツガムシ病事件

アノイリナーゼ菌というビタミンB1を破壊して脚気を起こす菌とその保菌者についての論文をたくさん読んだ。 たとえば、高頭、敬子. "腸内腐敗の研究 Ii ". ビタミン 5 (1952): 363-68. この一連の仕事は、1953年に新潟医科大学の博士論文となった。この研究…

ドストエフスキイ「現代生活から取った暴露小説」

Dostoyevsky, Fyodor M. "現代生活から取った暴露小説のプラン." In 後期短編集, 181-94. 東京: 福武書店, 1987.Dostoyevsky, Fyodor M., and 正夫 米川. ドストエフスキイ後期短篇集. 福武文庫. Vol. と0202: 福武書店, 1987. ドストエフスキイは私が「まだ…

大英博物館・スキタイ展

www.britishmuseum.org 大英博物館の会員誌が来た。9月14日からスキタイ人(スキティア人)の文化についての大きな展示があるとのこと。素晴らしい企画で、思わず見惚れてしまう。これと関連して、11月から「神々と生きること」という企画が始まる。世界各地…

アフリカのグローバル・ヘルスー公衆衛生業務者のための歴史・人類学のテキスト

Giles-Vernick, Tamara, and James L. A. Webb. Global Health in Africa : Historical Perspectives on Disease Control. Perspectives on Global Health. Athens: Ohio University Press, 2013. Lachenal, Guillaume. "A Genealogy of Treatment as Preven…

戦前と戦後の医学研究の短期的な格差

石橋卯吉・村野廉一「健康人ノぢふてりー保菌率ニ関スル研究」『日本微生物学病理学雑誌』31(1), 1937, 99-103. 伊與雄二「蠅の保菌数に関する研究」『十全医学会雑誌』52(4、5、6)、1950、29-37. 日本の細菌学に関する研究をしているせいで、731部隊…

顔の女性化のための美容外科手術の歴史

www.amazon.co.jp デューク大学出版局から医療人類学者の論考が刊行された。Facial Feminization Surgery を描いたものである。これは、顔の女性化のための美容外科手術と訳すのだろうか。英語では FFSと略されている。ネットで検索すると、英語では性器のう…

第69回正倉院展と異国的な文章

www.narahaku.go.jp この10年くらい、正倉院展に行くという小さな贅沢をしている。色々と好きな個所があるが、一つが文章である。予告の文章やカタログを飾る文章は、不思議な文章で、おそらく名文と言ってもよい。私には全く読めない漢字、聞いたことがない…

1933年のモダニズムと看護婦

中村, 史子, 園子 中西, 愛知県美術館, 岐阜県美術館, 三重県立美術館, and 中日新聞社. 魔術/美術 : 幻視の技術と内なる異界. 愛知・三重・岐阜三県立美術館協同企画. Vol. No.6: 愛知県美術館 : 中日新聞社, 2012. 中井, 康之, 国立新美術館, 国際交流基金…

イギリスの化学兵器開発と人体実験

Schmidt, Ulf. Secret Science : A Century of Poison Warfare and Human Experiments. Oxford University Press, 2015. イギリスの化学兵器開発に関する生命倫理学の優れた仕事を拾い読みする。人体実験の主題で研究するときには、しっかり読もう。1915年の…

ニワトリのユートピア

www.atlasobscura.com 19世紀から20世紀中葉までのニワトリの画像の展示。記事の内容とは少し違うが、これが雄々しく堂々としたオスと、小さく従順そうなメスの、家族の肖像画のようで、とても面白い。 私が子供の頃に、父親がニワトリのユートピアの魔法陣…

19世紀後半のアメリカのテクノロジーと資本主義

www.economist.com エコノミストの書評より。19世紀後半のアメリカ社会について。南北戦争に勝利した北部が、南部の保守的な理念を打ち破って、個人の自由と平等主義の理念を打ち立てると同時に、これが資本主義の帝国へと移行していく時期を描いた書物の…

鮭の燻製を食べるために BASIC を習ったウンベルト・エーコ

www.theparisreview.org Kafiristan - Wikipedia 週末の朝だから、午前中は少しゆっくりする。庭仕事をして、ウェブでどうでもいいことを知識として仕入れて、読まなくてもいい本を読む。今日は、アフガニスタンの一地方であるヌリスタン Nuristan で、かつ…

Medicine Line アメリカ―カナダ国境の北緯49度線の別称 

49th parallel north - Wikipedia 無知の告白(笑)学術雑誌の目次をみていて、Medicine Line という言葉が出てきて、意味が分からなかったのでネットで調べた。 おそらく19世紀にアメリカと現在のカナダの間で北緯49度線が国境となったとき、現地の先住民と…

731部隊(NHKスペシャル)について+日本の大学医学部の学用患者の問題

http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170813 NHKスペシャルの731部隊の特集「731部隊の真実 ーエリート医学者と人体実験ー」がYouTube 上に落ちていたので、喜んでそれを観た。ツィッターやFBで高い評価を聴いていたが、その通りの素晴ら…

フィルヒョー全集が刊行中

Olms - Weidmann: Fachverlag für Geisteswissenschaften ドイツのオルムズ社から刊行中のルドルフ・フィルヒョーの全集。全71巻で、うち半数を刊行済み。全体は5部にわかれ、1. 医学、2.政治、3.人類学・民族学・原始史、4.書簡、5.フィルヒョー研究からな…

英語ワークショップの開催(9月8日)

以下のようなワークショップを開催します。私の研究室にかかわる若手の学者たちが英語で発表するワークショップです。もう5年くらい続けていて、「この世界をつくる構造」の一つになってきました。 Work in Progress: Young Scholars' Workshop in English F…