『科学史研究』最新刊の医学史に関連する記事

日本科学史学会の機関誌『科学史研究』の2018年57巻no.287号に医学史関連の記事が二つ。一つが 任正爀 先生による「朝鮮医学史研究の近年の動向について」。任先生は一流の医学史家であり、優れた日本語の業績でも知られている。申東源先生の『コレラ、朝鮮…

ユスティニアヌスのペストと文書史料とDNA史料

Gruber, Henry. "Indirect Evidence for the Social Impact of the Justinianic Pandemic: Episcopal Burial and Conciliar Legislation in Visigothic Hispania." Journal of Late Antiquity, vol. 11, no. 1, 2018, pp. 193-215. ペストの第一回のパンデミ…

日本のヒステリーとジェイムズ・ボンドの翻訳

日本の<ヒステリー>という概念が、多分複雑に構成されていて難しい。 ヒステリーは、ヨーロッパではヒポクラテスやプラトンの古典古代の昔から、若い女性の疾患である。性欲が高まり子供を妊娠したいと思っているくらいの若い女の子宮が体内を動いてさまざ…

地図を使えるようになりたい(笑)

Isis の最初の論文は、ロシアからやってきた研究者たちが計量的な論文を書き、時系列と地図上の空間をうまく使っている。古典古代の自然哲学の著作で新しい発見が行われた時系列と空間をグラフと地図を使って説明するものである。アテネからアレクサンドリア…

アヤ・ホメイ先生の真菌症の歴史の著作の書評です!

https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/699474 Volume 73 Issue 3 | Journal of the History of Medicine and Allied Sciences | Oxford Academic マンチェスターで教えられるアヤ・ホメイ先生が、先生であられたマイケル・ウォーボーイ先生と…

日本の医師のバーンアウト

医学書院/週刊医学界新聞(第3295号 2018年10月29日) 週刊医学界新聞での特集は、日本の医師のバーンアウトの特集。日本の医師にもバーンアウトがあることは多くの方がご存知だろう。アメリカや中国においてもバーンアウトが存在し、中国の脳神経内科医7,000…

症例誌をどのように書くかによる臨床リサーチの実践ー1920年代ベルリン精神科病院より

h-madness より。Isis の最新号に精神病院のカルテから臨床リサーチがどのように行えるのかということを議論した論文があるとのこと。ちょうど週末に届いた最新号を実際に読んでみたらドイツのベルリンの精神病院の症例誌の構成を研究した議論。実際に症例誌…

1980年代のカリフォルニアの農業労働者のサイコジェニックな流行病

Kurz, Peter and Thomas E. Esser. 1989. Journal of Occupational Medicine. 31, 4: 331-334. 1980年代にカリフォルニア州において、農業労働者が集団サイコジェニック神経症流行を経験した事件の報告である。無関係な3件の事件である。それぞれ患者の数は…

精神医療の文書の歴史

https://historypsychiatry.com/2018/10/26/journal-rethinking-history-223/ h-madness からの連絡。精神医療の歴史を語るときの文書に関するフレッシュな議論が出ています。イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランドなどの第一線の研究者たちの論考で…

ヴァイオレットとパープルの歴史

エコノミスト・エスプレッソの土曜の記事は芸術関係のものを集めたもの。一番楽しいものである。今日の冒頭は紫の歴史という面白い話。引用している Journal of Cognition and Culture の記事も読んだ。基本は、19世紀の印象派の絵画による利用とともに、紫 …

OUPの医療倫理の歴史のサイト

blog.oup.com OUPから生命倫理学の著作案内のご案内が来た。OUPだけで数百冊も出ている人気領域でどれを読むか迷うくらいである。その中で、医療倫理の歴史を描いた媒体があって面白かった。年表と有名な事件とOUPの人気書への案内という組み合わせである。1…

晩秋のバラ

今日は午後に少し雨が降りました。晩秋らしい冷たい感じがしてきます。庭では濡れたデズデモナが今年最後の美しさです。

オーストラリアが世界で最も優れた先進国か

www.economist.com エコノミストの記事。オーストラリアが発展していること、それも世界の先進国で最も優れた国になっているという記事である。独立して読んでもいいし、学問の世界でもその傾向があると実感する。私はニュージーランドには何度か行ったけれ…

バイオエシックスと技術

加藤尚武先生の『バイオエシックスとは何か』という書物は、大きな字で印刷されているが、とてもいい書物である。哲学と歴史の関係は面白いもので、医学に関する哲学的な分析は、医学の歴史的な分析と、どのような関係になるのか、私もよく分からない。先日…

20世紀の中国医学における母乳論

大道寺慶子「『婦女雑誌』の母乳育児論に見る身体と近代」 大道寺さんのとても良い論文。1915年から1931年の上海で刊行されていた月刊誌『婦女雑誌』に掲載されている母乳論が分析の核。この20世紀の中国の女性用雑誌の内容を分析するのに、4つの軸がある。…

イギリスの結核、日本の結核、南アフリカの結核

Packard, Randall M. White Plague, Black Labor : Tuberculosis and the Political Economy of Health and Disease in South Africa. University of California Press, 1989. 青木, 正和. 結核の歴史 : 日本社会との関わりその過去、現在、未来. 講談社, 20…

視覚的胎教と探偵小説

山口俊雄 (2008). "夢野久作「押絵の奇蹟」論--迷信・科学・文学." 愛知県立大学文学部論集. 国文学科編 57: 89 - 122. http://akihitosuzuki.hatenadiary.jp/entry/2018/10/16/181431 http://doi.org/10.15088/00001011 先日に母斑の話をしたときに、森洋介…

電気ケトルを新調しました!

研究室の電気ケトル。10年以上前に買ったのですが、全体が水漏れしてくるようで、新しい電気ケトルを買いました。アマゾンの人気投票でかなりの人気がある商品で、しかも2500円くらい。これを買ってみました。

医学校の臨床教育の歴史について

Sint Caeciliaklooster (Leiden) - Wikipedia 医学史の教科書の18世紀の章を書いている。これまでルネサンスのヴェサリウスの解剖学、宗教改革のパラケルススと錬金術、科学革命のハーヴィーと機械論という個人を軸に書いてきた。18世紀はそのような書き方が…

東京大学の旧山中寮

東京大学山中寮内藤セミナーハウス by ABREUVOIR 東大の『淡青』という広報誌がある。『淡青』というタイトルは、1920年に行った京都大学とのレガッタ戦で抽選で選んだ色とのこと。ダウンロードできる。 今回は有名な猫特集で、先生たちが書く、面白く読みご…

秋の庭とアマガエルなど

土曜の朝、先日の台風で倒れた木を処理して、剪定枝の引き取る市の場所に行ってきました。レモンを失ったのですが、シチリアレモンは健在ですし、庭からの景色も良くなった気がします。アマガエル、トウガラシ、セージ、シュウメイギクなども健在です。

パリと狂気・精神医療の歴史の画集が出版されました

Parigramme - tout paris est à lire h-madness のエディターの一人がであるブノワ・マイエルス先生が、パリと狂気・精神医療の歴史の画集を編集したとのこと。中世から現代までのパリを取り上げ、さまざまな著名な画像や見たことがない画像を使っています。…

タカブシギ(鷹斑鴫)について

日本野鳥の会からカレンダーを買う時期になった。今年のカレンダーの後ろの壁などに挿し、今月のページでめくるのを忘れていたものをめくる。野鳥の会の小型のカレンダーだと、10月はコゲラで、9月はタカブシギだった。コゲラはとても可愛く、タカブシギも生…

東京の福祉史について

河畠, 修. 福祉史を歩く: 東京・明治. 日本エディタースクール出版部, 2006. 河畠, 修. 福祉の近代史を歩く: 東京・大正〜昭和. 日本エディタースクール出版部, 2011. 四谷の二葉幼稚園、上野の万年尋常小学校、大塚の養育院、本郷・西麻布・広尾の仏教徒の…

マン・ブッカー・プライズ受賞の『ミルクマン』の世界

www.economist.com 今年のイギリス最大の文学賞であるマン・ブッカー・プライズは、北アイルランドのアン・バーンズという作家の作品『ミルクマン』が獲得した。20世紀後半の北アイルランドのベルファーストを舞台にして、カトリックとプロテスタントの政治…

大学院と英語力の利用

大学院のセミナーに英語力を伸ばす方式を考えていて、この学期から試してみるのが、英語を読むという基本的な能力に付け加えて、英語を書く能力と英語で議論する能力を磨くということ。私が受けた30年前の授業では、英語と日本語の双方があった。準備段階で…

母親の想像力と母斑とほくろ

今日の英単語は naevus. 先天的な色付きの皮膚の変化というような意味である。医学史家ならば mother's imagination を思い出す言葉である。17世紀から18世紀のヨーロッパでは、母親の妊娠中に何かの理由で強い想像力が働くと、体内の胎児に影響が現れるとい…

『帝国日本の科学思想史』と新しい前進

坂野先生と塚原先生が編集された『帝国日本の科学思想史』をいただきました。気象学、地理学、暦学、温泉調査、南洋群島、アメリカによる沖縄の結核制圧、イタイイタイ病など、多くの興味深い主題の論文を掲載しています。故金森先生の前進の旗印を引き継ぐ…

『「いやし」としての音楽 江戸期・明治期の日本音楽療法思想史』が刊行されました!

京都の国際日本文化研究センター機関研究員の光平有希先生。近世と近代の双方の音楽療法の歴史を開拓している研究者です。光平先生の博士論文を仕上げた著作が刊行されました。日本の音楽療法の発展の複雑さが描かれている著作です。ことに、江戸時代から明…

マテリアルと文化と医療について

www.lrb.co.uk LRBの書評。プリンストンのアンソニー・グラフトン先生が、ピエトロ・ベンボに関する研究書を2冊評論している。周辺の主題の研究状況を深く理解して、素晴らしい書評である。マテリアル・カルチャーの論文を準備していることもあって、熱心に…