中世ヨーロッパのハンセン病隔離とケアの意味

Brenner, E. (2015). Leprosy and charity in medieval Rouen: Royal Historical Society. 中世のヨーロッパにおけるハンセン病者は二つの両極的な側面を持っていた。隔離・他者化と介護・慈善の対象という二つの側面である。私が医学史を勉強し始めたときに…

佐藤元状『グレアム・グリーン ある映画的人生』

これもしばらく前ですが、佐藤元状先生に、ご単著の『グレアム・グリーン ある映画的人生』をいただきました。小説と映画という二つの方法の交錯を考えている書物。私は医学史ですが、写真、映像、症例などのさまざまな方法の作用を考えるようになりました。…

北村紗衣『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち:近世の観劇と読書』

しばらく前のことでしたが、日吉の研究室で、北村紗衣先生から最初のご単著をいただきました。『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち:近世の観劇と読書』です。優れた英文学者たちからは、いつも多くを学ばせてもらいました。何か大切な時に、インスピレーシ…

イギリスにおける医学史の発展について

私がイギリスに留学している1989年から1996年という期間は、イギリスにおける医学史研究が非常に急速な発展をした時期であった。1970年代に始まり、現在でも発展が新しい方向に展開している。1970年代には、イギリスの医学史研究はアメリカやドイツよりもず…

科学革命期の新しい医学の発展ー『医学史とはどんな学問か』第六章

keisobiblio.com 「けいそうビブリオフィル」の連載です。17世紀の科学革命期に、新しい発展を見せた医学の発展を記述しました。主人公たちは、一方では血液循環のウィリアム・ハーヴィーであり、もう一方では、デカルト、ガリレオ、ニュートンに倣った医者…

「いつだって猫展」と脚気のお守り

「いつだって猫展」|静岡市美術館 静岡市の市立美術館で「いつだって猫展」の展示が始まった。名古屋、愛媛、京都でも開催された展示である。実佳が招待され、一緒に面白い展示を楽しんだ。江戸時代と明治初期のアートにおいて、ネコが面白可笑しく用いられ…

スカンディナヴィア諸国の優生学と不妊手術

Broberg, Gunnar, and Nils Roll-Hansen. Eugenics and the Welfare State : Sterilization Policy in Denmark, Sweden, Norway, and Finland. Uppsala Studies in History of Science. Rev. pbk. ed ed. Vol. v. 21: Michigan State University Press, 2005.…

現代の中国の医療に関する統計について

Reinarz, Jonathan, and Rebecca Wynter. Complaints, Controversies and Grievances in Medicine : Historical and Social Science Perspectives. Routledge Studies in the Sociology of Health and Illness. Routledge, 2015. Jonathan Reinarz 先生はバ…

流行と身体の歴史の新シリーズ(マクミラン)

https://mobile-base.springer-sbm.com:44300/SAP/CUAN/ZCUAN_PERSEMAIL?sap-outbound-id=0000002023:1:5490 ロンドンのスザンナ・ビエノフ先生が軸になって、マクミランから流行と身体の歴史の研究書のシリーズが打ち立てられることになりました。シリーズ…

新しい遺伝学と<人種>の概念

www.nytimes.com New York Times にハーヴァードの遺伝学の教授が、人種概念をどのように遺伝学から理解するのかという古い問題に貢献している記事。人種というのは社会的な現象であるということを認めたうえで、しかし、さまざまな<人種>間の違いが、単な…

陽成天皇と<変成男子>?

歌舞伎座の会員誌である「ほうおう」を読んでいて、『雷神不動北山桜』(なるかみふどうきたやまざくら)の見どころを読んでいたら、いきなり変成男子に出会ったのでメモ。手元にある『歌舞伎手帖』も見たが、この件については何も書いていなかった。 この話…

19世紀に現れたハーヴィーの解剖板という虚偽とその社会性?

https://www.rcplondon.ac.uk/news/anatomical-tables Gere, Cathy. "Williams Harvey's Weak Experiment: The Archaeology of an Anecdote." History Workshop Journal 2001, no. 51 (2001): 19-36.Peto, James. The Heart. Yale University Press, 2007. …

ドニゼッティの晩年の梅毒性精神疾患による入院-フランスとイタリア

https://en.wikipedia.org/wiki/Gaetano_Donizetti ガエターノ・ドニゼッティ (Gaetano Donizetti, 1797-1848) はイタリア生まれで国際的に活躍したオペラの作曲家。『ルチア』『愛の妙薬』などが著名な作品。『ルチア』はスコット原作の小説に基づき、愛の…

コクトーのアヘン中毒と精神病院の患者の手記

Cocteau, Jean, and 大学 堀口. 阿片 : 或る解毒治療の日記. 角川文庫. 12版 ed. Vol. 396: 角川書店, 1998. ジャン・コクトー (Jean Cocteau, 1889-1963) はフランスの文芸家。私が全く知らない20世紀のフランスの文芸の世界とドラッグの世界の話だけれども…

ダーウィンの自伝の調整・だめな学生と幸福な家庭

Darwin, Francis Sir, and 丹 小泉. チャールズ・ダーウイン : 自叙伝宗教観及び其追憶. 岩波文庫. Vol. 33-913-1: 岩波書店, 1927. Charles Darwin, The Autobiography of Charles Darwin http://darwin-online.org.uk/EditorialIntroductions/Freeman_Life…

ギリシアの性、ルネサンスの性、トマス・ラカー(笑)

https://www.amazon.co.jp/Rise-Fall-Adam-Eve/dp/0393240800/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1521944589&sr=8-1&keywords=rise+and+fall+of+adam+and+eve 私の馬鹿さを笑う話を半分、残りの半分は良い本の話(笑) Prospect というイギリスの月刊誌を読んでいて、…

日本の精神医療と東アジアの各国との比較+OECD

田形弘実ほか. "東アジアの精神科医療事情." 精神科 31, no. 3 (2017): 222-25. 基本的なデータを手にすることができた東アジアに関する論文。まずは現在の精神病床数、精神科の医者の数を、中国、韓国、台湾でくらべた表である。日本の精神病床数が中国と…

雑誌『精神科』2017年9月号より各国の精神科医療事情の紹介

科学評論社が刊行している雑誌『精神科』が、2017年の9月に特集を出しました。特集を二つ組んでいて、一つは各国の精神科医療事情、もう一つは措置入院の現状と課題です。どちらもとても面白い論文が多いです。私は「各国の精神科医療事情」に、イギリスの精…

古生物学者の時間の使い方(笑)

これは今日のエコノミスト・エスプレッソから。古生物学者の時間の使い方について。古生物学者は研究の時間をゆっくり使うことで知られている。化石となった恐竜の骨を掘り出すのに、ざくざくと掘り出すのではなく、化石を傷つけたり周りの環境を破壊しない…

Eri Nakamura's work on shell-shocked Japanese soldiers

www.academia.edu Dr Eri Nakamura, who will be a postdoc at Keio University from this April, published a pioneering work on shell-shocked soldiers in WWII and financial and ideological debate about the "Invisible" War Trauma.

天文学者が詠むハイク

www.economist.com エコノミストの記事から、外国の天文学者のあいだで ハイク(haiku )を読むのが大ニュースという楽しいお話を知る。2001年にヒューストンの天文学者が難しい内容の論文を一つのハイクに美しくまとめることをした。翌年には、同じように論…

大学の授業の改善について

日本英文学会関東支部, 日本英文学会, and 徹 佐々木. 教室の英文学. 研究社, 2017. イギリスにいた時代はよく英文学者とご一緒に仕事をしたこと、アバディーン大学でのポスドクは実は英文学の枠組みでのものだったこと、日本に帰ってきても英文学者と一緒に…

神谷美恵子の全集の月報・辻潤の全集の月報

神谷美恵子の全集がみすず書房から出ており、辻潤の全集は五月書店から出ている。いずれも面白い月報を出している。それぞれが違う個性を持っていて、その個性は神谷と辻の個性を引き出すようなものになっていて、読んでみるととても面白い。また、精神科の…

「精神医療とは、そもそも何なのか」シンポジウムの開催

歴史学研究者の兵頭晶子さんから、「精神医療とは、そもそも何なのか」というシンポジウムの開催のお知らせを受け取りました。日本社会臨床学会の第26回総会で、6月10日での開催であるとのこと。 日本社会臨床学会第26回総会のご案内 日本社会臨床学会の第26…

Danse Macabre – Totentanz – Dance of Death (Band 13) Voegele, Joerg and Luisa Rittershaus. Dans Macabre - Totentanz - Dance of Death. Goettingen: Vuvillier Verlag, 2016. ドイツで医学史を学んできた梅原君の先生であるフェゲレ先生に頂いた書物…

近世ペストに関する生々しい絵画

Bailey, Gauvin A., Sheila Barker, and Museum Worcester Art. Hope and Healing : Painting in Italy in a Time of Plague, 1500-1800. Clark University : College of the Holy Cross : Worcester Art Museum, Distributed by the University of Chicago …

薬師如来と性転換の謎が深まる(笑)

亀井勝一郎. 大和古寺風物誌. 新潮文庫. 新潮社, 1997. 昭和戦前期から太平洋戦争期間中に書かれた文章が多い。奈良が爆撃されたときに備えて持ち運べる仏像は田舎に持っていけというようなことも書いてある。 それとは無関係だと思うが、新薬師寺の薬師如来…

科学史や医学史における領域の変遷について

Bray, Francesca. "Science, Language, and the Purity of Bottled Water." East Asian Science, Technology and Society 11, no. 3 (2017): 385-90. しばらく前の EASTSを読んでいて、そこで何気ない冗談がはさまれている。ケンブリッジ大の先生で、中国の…

開かれた社会と閉じた社会と学問について。ついでに日本の医学史について(笑)

www.economist.com エコノミストからとても良い記事。読んでおくと良い。開かれたと閉じられたという現在の論争で使われる二つの価値観の論争を分析して、その二元論がいかに粗雑で、重要な本当の対立をむしろ隠しているかを書いている。特に面白いのが、学…

精神疾患のブーム的な増減についてー20世紀後半のアメリカでADHD という診断と患者が増加した社会的な理由

Smith, Matthew『ハイパーアクティブ : ADHDの歴史はどう動いたか』石坂好樹、花島綾子、村上晶郎訳(星和書店、2017) マシュー・スミス先生とは、スコットランドの学会でお会いしたことがある。スミス先生はグラズゴウで発達しているストラスクライド大学…