メランコリアの歴史・アンソロジー


 勤めている大学が通信講座を持っていて、連休明けにラジオ放送の収録がある。文化と精神病という大きなテーマで、ルネッサンスのメランコリーと、宗教改革期の悪魔憑きと、19世紀のヒステリーについて、3回にわけて一般的なことを話そうと思っている。 

 その関係で本を読み漁っていたら、便利なアンソロジーがあることを発見した。アリストテレスからクリステヴァまで、メランコリアについての色々なテキストの抜粋を集めて、解説を付したアンソロジーである。コーネル大学を中心にしたニューヨーク近辺の精神医学史研究グループの中から出てきた仕事なのだろうか。400ページ弱で全部で30点のテキストだから、それぞれのテキストについて結構まとまった分量が読める。古代、中世、近代、現代の配分もいいし、医学、哲学、文学と色々な分野からバランスよく採っているのもいい。それぞれのテキストにつけられたイントロダクションも十分だし、全体のイントロダクションも妙に力が入っていないし悪くない。丁寧に一次資料のテキストを読ませて頭を使わせるゼミの教科書に最適である。

文献は、Radden, Jennifer ed., The Nature of Melancholy: From Aristotle to Kristeva (Oxford: Oxford University Press, 2000). 
OUPのこの本のページは以下の通り。
http://www.us.oup.com/us/catalog/general/subject/Philosophy/HumanNature/~~/c2Y9YWxsJnNzPWF1dGhvci5hc2Mmc2Q9YXNjJnBmPTUwJnZpZXc9dXNhJnByPTEwJmJvb2tDb3ZlcnM9eWVzJmNpPTAxOTUxNTE2NTg=