19世紀心理学のアンソロジー

 19世紀の心理学のアンソロジーを読む。文献は、Taylor, Jenny Bourne and Sally Shuttleworth eds., An Anthology of Psychological Texts 1830-1890 (Oxford: Oxford University Press, 1998). 

 人文社会科学のさまざまな領域で、医学や病気や身体の歴史への興味が高まっているのを反映して、大学の授業で使うことを前提にした便利な書物が増えてきた。総論的な医学の歴史の教科書も沢山出版されているし、大学院や学部の特論的な授業で使うための資料集も充実してきた。しばらく前に取り上げた「アリストテレスからクリステヴァまで」のメランコリー論資料集もそうだったし、この19世紀の心理学アンソロジーもそうである。医学史の中の他の領域でも、こういう便利な資料集が出ているのかしら。ご存知の方は教えてください。

 このテキストは、これまで文学史、文化史、社会史の研究者たちによって注目されてきたトピックを重点的に取り上げて、それに関する医学・心理学的な19世紀のテキストからの短い抜粋を集めるというスタイルを取っている。観相学、骨相学、メスメリズム、無意識、夢、記憶、心理的性差、ヒステリー、男性性、精神医療、モノマニア、進化論、退化、遺伝、人種など、19世紀研究の主流の話題が満載である。この総花的な構成のため、個々の抜粋は短く(2-4ページのものが多い)、解説も短くなっているが、授業ではてきぱきと読み進めることができるだろう。巻末の文献一覧も役に立つ。