伝統の家庭薬

 低人さんのコメントにあった「正露丸」もそうだが、日本ではロングセラーの薬がたくさんある。というわけで、今日も雑談を。 

 家庭薬、売薬、日本での呼び方にいろいろあるが、私たちの間では OTC (Over-the-Counter) Drug などと呼ばれている薬がある。 医師による処方箋がなくても買える薬である。 無機質な雰囲気を漂わせている処方薬と違って、インパクトがあってなじみやすいパッケージで、ノスタルジックな人気がある。この話を研究会などですると、普段は真面目な研究者たちがそれぞれの思い出を語りだして、ディスカッションが楽しい雑談の場になる。

 1938年の東京の健康調査という面白い資料があって、仕事の合間を見て分析している。そこでは病気のエピソードの8割くらいが売薬で対処されている。医者にかかるのは2割くらい。売薬の中では、よく使われていたのは、やはり万能薬が多い。一位は外科の万能薬メンソレータム、二位は子供の万能薬だった救命丸、三位は婦人の万能薬の実母散だった。吹き出物などができたときに、比較的富裕な人々はメンソレータムを使い、比較的貧しい人々は「たこの吸出し」を使っていたという面白い結果が出た。

 名前を出した四つの薬は今でも売られていて、メンソレータム以外は、他のブランドの商品とともに、東京都家庭薬工業組合のホームページの「伝統薬ロングセラー物語」で紹介されている。 もちろん、正露丸のエピソードもあります! 
  
http://www.tokakyo.or.jp/