陀羅尼助と百草丸

 週末に京都で仕事があって、しばらくお休みをいただきました。 

 しばらく前に書いた、家庭薬の話にコメントがたくさんあった。 やはり人気がある。 というわけで、今日はコメントにあった幾つかの薬について、手元にある書物から簡単な紹介を。 宗田一『日本の名薬』(東京:八坂書房、2001) 山崎光夫『日本の名薬』(東京:文春文庫、2004)どちらも読みやすくて色々な薬のことが書いてあるいい本です。

 朧月夜さんが書いていらした「陀羅尼助」、私は書物の上だけで名前を聞いたことがある薬で、それが実際に売られていることも、ましてやそれを常備している生きて動いている人間(失礼!)がいることも、想像していませんでした。 激しく不明を恥じます。 

 陀羅尼助。 キハダの樹皮などのオウバクをもとにした苦い薬。 僧が陀羅尼経を読むときに眠くならないように口に含むからとも、製造のときに陀羅尼経を唱えて霊力を込めるからとも言われている。 伊勢神宮の「万金丹」と似たパターンで、信仰を集めた霊場で製造されてお土産物となった。 吉野の山上岳など真言密教修験道の中心地で製造され、山伏が全国を売り歩いた。 他の真言系修験道場でも同じ薬が製造され、練熊、百草などの名称で売られていた。 くしくも、朧月夜さんと森羅さんは、どちらも真言系山伏の胃腸薬を書き込んだことになります(!) 

 ちょっと気がついたことを。 陀羅尼助、百草、正露丸。 胃腸薬では漢字名前のロングセラーが多くて、風邪薬と外傷は、ルル、パブロン、メンソレータム、オロナインと、カタカナ名前が多いような気がする。 ほんとだろうか? だとしたら、なぜだろう? 

 いつも思うのだけれども、日本のOTCの問題というのはアカデミックにエキサイティングなことが色々できる。 でも、日本の学生や研究者が新聞広告の画像を集めて喜んでいる間に、アメリカの日本研究の学生や医学史家が、洗練された方法論を使って優れたPhDを書くのだろうな。