アリストテレス『観相学』


プリニウスを読むついでにアリストテレスの全集を眺めていたら、偽書とされる『観相学』も収録されていて、そこに短いけれども面白い記述があった。プリニウスはテキストを持っていないけれどもアリストテレスはわりといいテキストを持っていて(笑)、プリンストンから出ている二巻本の全集を私は重宝して使っている。The Complete Works of Aristotle, ed. by Jonathan Barkes, 2 vols (Princeton: Princeton University Press, 1984). “Physiognomy” は第一巻の末尾に収録されている。

観相学physiognomyは、ルネサンス以降のヨーロッパで大流行した。ある人間の性格などを知るのに、その人間が似ている動物から類推するというのは、17世紀の情念の表現の理論家のルブランの画像などで知っていたけれども、アリストテレスを読むと、彼以前の観相学には三つの流儀があって、「動物アナロジー」はその一つ。他の二つのうちの一つは、「情念モデル」とでも言うのだろうか、ある人間の顔が悲しんでいるように見えるか、怒っているように見えるかということから、その人間の性格を類推するというもの。もう一つが、「人種モデル」というのか、ある個人が、エジプト人、トラキア人、スキティア人など、どの人種の外見に似ているかによって、その性格を類推するものである。この「人種モデル」の観相学については、全く知らなかった。 アテネの人々は、「誰それの顔はエジプト人みたいだから、性格もエジプト人みたいな○○にちがいない」と話していたんだろうか? 

画像は動物モデルの有名な作品、17世紀のルブランから。