「魔法の時代」



少し前のことになるけど、ロンドンへの出張の空いた時間に、ヴィクトリアから電車に乗って10分くらいの郊外にある落ち着いた美術館の特別展示を見てきた。The Age of Enchantment というタイトルで、ダリッチ・ピクチャー・ギャラリーで開催された、版画や子供向けの書物の挿絵の展覧会。

ビアズリーデカダンスから始まって、Jessie King, Annie French といった名前を聞いたことがないグラスゴウの女性アーチストたちの宝石細工のような水彩、それから有名なアーサー・ラッカムやエドモンド・デュラクの豪華挿絵の展示。ビアズリーは原寸で実物を見るのは初めてで、小さい複製だとつぶれてしまう部分、たとえば人物の衣服などの黒い装飾的な部分の精巧さなどががはっきりとわかる。背景の精巧な細工が目で見えると、白く残されている身体に微妙な影がさしてくるようで、そのエロティックさが際立っていた。

ビアズリーからの流れで見せられると、ラッカムやデュラクの作品も、いつも以上にエロティックな残像があるように感じてしまって、美術館のキュレイターがどういう展示をするかは、私たちの作品や作家の見方に影響を与えるんだなと改めて実感した。

実は、私はラッカムを何枚か持っているのだけれども、この展示できっと価格がかなり上がったんだろうな。これは、持っているものの価値が上がって嬉しいということではなくて、もう手が届かないところに行ってしまって悲しんでいるのですが(涙)

画像はラッカムの「ニーベルングの指輪」とデュラクの「氷の女王」。後者は展覧会のポスターにもなっていた。