ガンジーの健康哲学

未読山の中にあったガンジーの健康哲学についての論文を読む。文献は、Alter, Joseph, “Ghandi’s Body, Gandhi’s Truth: Nonviolence and the Biomoral Imperative of Public Health”, Journal of Asian Studies, 55(1996), 301-322. 仕事の性質上いろいろな内容の論文が「未読山」にあるけれども、さすがにこの論文が未読山から出てきたときは、なぜこんな論文を読もうと思ったのかと自分でもいぶかしく思った(笑)

このブログでは、できるだけ中身に立ち入った要約と紹介をするように心がけているけれども、この論文はさすがに気安く要約できない。話としては、ガンジーの菜食主義や禁欲などの身体にまつわる思想は、ヒンドゥーなどのインド土着思想に基づき、彼の個人的な精神世界の産物であると同時に、「公衆衛生」と呼べるような西洋由来の思想・科学に基づいた政治的な意味もあったというのが大枠。 ただ、「ガンジー学者」を念頭において、その中で新しい解釈を出そうとしているディープな研究なので、その部分がわからないと、この論文のコアを評価することはできない。

わかった範囲でいうと、ナショナリズムの流れの中で非西洋的な思想に基づく健康法が出てきたことが面白かった。 実は、昭和戦前期に一大ブームを作り、田中聡『健康法と癒しの社会史』が取り上げているような「健康法」について、似たようなことを考えたことがあった。 特に全体主義国家に顕著だけれども、20世紀前半の国家が、国民の身体を通じてある政治的な意図を実現しようとしていたときに、その国家主義に反対するような政治思想もやはり身体を問題にしていたというようなことを考えていた。 身体を通じて、政治思想の争点が作られていたということになるんだろうな。