山海経


必要があって『山海経』(せんがいきょう/さんかいけい)に目を通す。高馬三良訳の平凡社文庫版。

カバーにかいてある情報をほぼ丸写しさせていただくと、中国古代の地理書、著者は不詳、もっとも古い部分は戦国時代(紀元前5-3世紀)に成立し、そのご、秦・漢(紀元前3-後3世紀にわたってつぎつぎと付加されていったとされる。洛陽周辺の山々と、そこから四方に伸びる山脈を記した部分、そしてその周囲に存在すると考えられた国々のことを記した部分、合計18巻よりなる。各地の山川に産する草木、鳥獣、虫魚などの特徴と用途を記したもので、私のような中国の古典のことを何も知らないものが読むと、地理と本草を組み合わせたような書物だという印象を持つ。

ぶっきらぼうだけど独特のリズムを持っていて心地よい。たとえば「北山経」の冒頭近くで述べられている「帯山」という山について、ちょっと抜書きする。

頂上には玉が多く、麓には青碧が多い。獣がいる。その状は馬の如く、一つの角が鍍金してある。その名はカンソ[難しい漢字]。火を避けるによろし。鳥がいる。その状は烏のごとく、五彩にして赤い文あり。名はキヨ[同じく難しい漢字]。これは自家生殖する。これを食うと疸(ようそ、と読むそうだ)にならぬ。[ ここで、川と湖の記述がはいる] 水中にハヤ[難しい漢字]が多い。その状は雉のごとくで、赤い毛、三つの尾、六つの足、四つの首、その声はカササギのよう。これを食らうと憂さをはらすによろし。

この調子で延々と記述が続く。いったい何種類くらいの生き物(実在のものも、想像上のものも含めて)が記述されているのだろうか。らい病とか疫病とかの他に、意外に精神病の治療に効くという動物が多い。