「世界を変えた十二の病気」

『世界を変えた十二の病気』というタイトルの一般書を読む。文献は、Sherman, Irwin W., Twelve Diseases That Changed Our World (Washington D.C.: ASM Press, 2007).

引退したアメリカの生物学者が12の病気を選んで、逸話風の歴史を語った書物。一般向けの本だけれども、面白く読んだ。彼が選んだ12の病気というのは、有名で順当なところで、コレラ、天然痘、ペスト、梅毒、結核、マラリア、黄熱病、インフルエンザ、AIDS。 ちょっと面白いところで、「ジャガイモ凋萎病」という、19世紀の半ばにアイルランドのじゃがいも飢饉を引き起こしたジャガイモの病気。 

ユニークなところで二つ。一つは、メアリー・スチュアート以来イギリスの王室に遺伝しているポルフィリン症という病気。これは、アラン・ベネット原作の戯曲『ジョージIII世の狂気』で有名になって、ナイジェル・ホーソーンヘレン・ミレンで映画化もされた(邦題は『英国万歳』)。もう一つが、イギリスのヴィクトリア女王が謎の発症をし、彼女の9人の子供や孫を通じてヨーロッパの王室に入り込んだ血友病。ヴィクトリアの末娘でロシアの皇后になったアレクサンドラやその王子などの血友病は、その宮廷を弱め、ラスプーチンの台頭を許したという。またスペイン王室にもヴィクトリア由来の血友病が入り込んだそうだ。ヨーロッパの王室の最後は血友病で彩られていたというわけか。 へえ~ 知りませんでした・・・ この手の「有名人のカルテ」風の古い医学史を激しく糾弾し軽蔑している人がいることも知っているけれども、まあいいじゃないですか(笑)