海民の生活

必要があって、山口徹『海の生活誌』(東京:吉川弘文館、2003)を読む。

腰を据えて読めば興味深い話題が満載された本なのだけれども、さすがに鰯の地引網の変遷などの解説をいちいち追っている暇はないから、拾い読みをした。本全体としては、海辺の村はみな漁村、あるいは半農半漁の村であるかのように思い勝ちだけれども、実際は多様であったということを強調している。たとえば瀬戸内海の倉橋島の村は、狭い土地にわずかの米、雑穀、野菜を作り、山を段々畑にしてみかんを植え、漁業も盛んではなかった。その島では江戸時代には船についての知識を利用した造船業が栄えていた。また、他の地域の海辺の村においても、海運の便を利用した商業などで生計が立てられていた。集落の背後がどのようになっているか、そして地先の海面がどのような地形なのかによって、海辺の村は性格を大きく異にしていた。

無知から救ってくれただけでなく、これは大きなヒントである。海辺の村々でのコレラ流行の例はすごく沢山あって、もしかしたら生業のパタンと関係あるかもしれない。