寺山修二の名言集

未読山の中から、寺山修二『ポケットに名言を』をトランクにつめて出張に持ってきた。

古今東西の書物や映画・流行歌から寺山が選んだ名言と、自選の名言からなる薄い本。寺山の時代特有の、嫌味がない芝居気たっぷりのものが目立つ。三島やワイルド、ラ・ロシュフーコーといった名言の達人たちから選ばれているのは分かる。太宰からも多く採られていて、これもさすがに上手いなあと思うけれども、好き嫌いははっきり分かれるだろう。

ひとつ、これは本当に無知で恥ずかしいのだけれども、チェホフが名言の名手だったことは知らなかった。三島やロシュフーコーの鋭利な切れ味のものとは正反対の名言で、急所をはずした切っ先が空中に優雅に漂うような、不思議な感覚がある。二つほど。

「お嫁さんを貰って、家具を入れて、書き卓を買って、文房具を揃えた。ところが、何も書くことがなかった。」

教育-「よく噛むんだよ」とお父さんは言う。そこで、良く噛んで、毎日二時間散歩をして冷水浴をした。だが、やっぱり、不仕合せで無能な人間が出来上がった。