光源氏のマラリア

必要があって、『源氏物語』の「若紫」の冒頭に描かれる、光源氏が「わらはやみ」を病む場面を読む。瀬戸内訳で眺めて、岩波の古典大系(古いヴァージョン)でチェックした。

瀬戸内訳はこのようになっている。

源氏の君は瘧病(わらわやみ)におかかりになり、あれこれと、まじないや、加持祈祷などをおさせになりますけれど、一向に効験(ききめ)がありません。
たびたび発作がおこりますので、ある人が、
「北山のさるお寺に、すぐれた修行者がおります。去年の夏も、この病気が流行り、人々がまじないをしても一向に効かず、困りきっておりましたのに、この聖がたちまちなおした例がたくさんございました。こじらせてしまいますと厄介ですから、早くこの聖の祈祷をお試しなさいませ」
など申し上げますので(後略)

「去年の夏も、この病気が流行り」というのは、原文では「去年の夏も、世におこりて」である。マラリアは中世の日本に存在しただけではなく、「流行」したことも推察できる。

・・・いまここで使った方法は、古き悪しき時代の医学史の典型だけど、色々な意味でそういう方法が必要な問題もある。