菅原道真の不眠症

今日は無駄話を。

厳しい日程の仕事がいくつか終わって、珍しく、必要でもなかったし、未読山にあったわけでもない本を読む。大岡信の『名句 歌ごよみ 冬・新年』(角川文庫)。

『折々の歌』をはじめ、大岡信の名歌の解説のおかげで、日本の古典と現代の詩歌に親しんでいる人はとても多いと思う。私もその一人で、彼がいなければ、私の人生はとても貧しいものになっていた。

詩歌のアンソロジーというのは、読むたびに、以前に読んだときには気づかなかった作品がいいなと思うものだけれども、今回は、菅原道真の『菅家文章』から採られた、不眠症と陰鬱の詩(笑)が、心に染み入った。

床寒く 枕冷ややかに 明(よあけ)に到ること遅し
更めて(あらためて)起きて 燈前に独り詩を詠む
詩興変じ来たりて 感興をなす
身に関る万事 自然に悲し 

(言葉遣いは少し改めました) 

早朝に机に向かって仕事をするのは、確かに緊張感があっていい。けれども、早朝特有の静かな時間の孤独は、ふと気がつくと、心が彷徨い出ていることもある。