初期近代ヨーロッパ医学史

必要があって、初期近代のヨーロッパの医学・医療の歴史の概説書を読む。文献は、Lindeman, Mary, Medicine and Society in Early Modern Europe (Cambridge: Cambridge University Press, 1999). 

1990年代から2000年代の初頭にかけて、それまでの20年間で研究が蓄積されてきた「新しい医学史」の成果をまとめることが一つのブームのようになって、英語圏ではこの時期に数多くの教科書的なものが出版され、医学史を教えることがとてもやさしくなった。ただ、この教科書群は、それぞれ目標も質もかなりばらつきがあって、しばらく前に取り上げたブロックリスとジョーンズのフランス医学史は、包括的でありながら、教科書という言葉では表現できないほどの荒々しい野心が込められていて、読み応えがある。それに対して、この教科書は、たとえば医学理論の歴史を論じた章はかなりおとなしくて、及び腰な雰囲気すらある。 難しいものですね、教科書を書くというのは。