ヨーロッパ科学史―中世まで

必要があって、近代以前のヨーロッパ科学史の標準的な教科書を読む。文献は、Lindberg, David C., The Beginnings of Western Science: the European Scientific Tradition in Philosophical, Religious, and Institutional Context, Prehistory to A.D. 1450, 2nd ed. (Chicago: University of Chicago Press, 2007).

1992年に出た初版は、すぐに古代・中世のヨーロッパの科学史を一冊でカバーする最良の標準的な教科書として有名になり、2007年には第二版が出た。昔の言い方だと「インターナルな」科学史で、基本的な概念や、テクニカルな操作のコアの部分を丁寧に説明している。私は科学史の世界の流行を知らないが、方法論的には少し古いタイプの科学史だと思う。そもそも出発点からして、science という言葉が現在とはまったく違った意味を持っていた時代について、「科学」としてのscience の歴史を書くという、概念の定義をうまくしないと成立しない問題を設定している書物である。「科学とは何か」という問題について、何らかの定義を下して、科学と科学でないものの境界を引くことができるという前提に基づいて構想されている書物であるといえる。

その手の方法論の問題を議論することが、その研究者にとって実り多い時には、それを本気で考えればいい。今の私は、とりあえず中世の錬金術についてセンテンスを一つか二つ書くことが必要だから、この本は役に立った。 私たち教師には、こういう教科書が必要だと思う。 

皆さま、今年もご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。よいお年を。