広井良典『日本の社会保障』

必要があって、広井良典『日本の社会保障』(岩波新書、1999)を読む。著者は、数多くの新書と教科書を書いている実力者で、ファンが多く、私もファンの一人である。さらに特殊な必要があって(笑)、「はじめに」と「第一章 福祉国家の生成と展開」をとても丁寧に読む。メモをとって、3000字程度にまとめて、さらに250字程度にもう一度まとめる。学者の中には、自分の専門でない領域の本を、寝転んで斜めに読んだだけで要点が頭に入る人もいるだろうけれども、少なくとも私はそうではない(涙)

私が切り出したポイントは五つ。1) 到来したリスク社会における不確実性に対する公私の保障のあり方を議論しなければならない。2) その議論は、原理まで降りていく深みをもち、現実の経済社会の構造とあわせて議論するものでなければならない。3) 第二次世界大戦後のヨーロッパでは、空前の経済成長と福祉国家が相互補完的に成長し、両者の共生に関する社会民主主義の合意が形成されていたが、経済成長の低下とともに、負担としての福祉というモデルが現れ、激しい論争を呼んだ。4) その論争が一段落して、国家と市場の関係を軸に国際比較をしたとき、さまざまな形態の社会保障が可能であることが明らかになった。5) それを踏まえて、社会保障を、持続可能な発展を可能にする投資であると捉える方向で考察を進めることができる。