『曲がり角にきた福祉国家?』

必要があって、福祉国家論の入門書を読む。文献は、クリストファー・ピアソン『曲がり角にきた福祉国家?』(東京:未来社、1996)

昨日記事にした書物を読んだおかげで、すらすらと読むことができた部分が多かった。それに加えて、この書物は学生の試験対策用に書かれたといっても過言でないほど、恥ずかしいほど分かりやすい構成になっている。それぞれの節で福祉国家についてのある学派の見解をまとめ、そらに、その節の内容を数行にまとめたものがある。この第二段階のまとめには、さらにご丁寧なことに囲み線までついて強調されている。

テーゼ1: 福祉国家は産業社会の発展によって生じた<必要>の産物である。
テーゼ2:福祉国家は、産業化という状況において、完全な市民権の獲得を目的として成功した、政治的組織化の産物である。
テーゼ3:福祉国家は、産業的・政治的動員の産物である。福祉国家はまた、資本主義の漸進的な変革を目的とする社会民主主義の政治的な計画の成功をあらわしている。

・・・というような具合である。

記述も丁寧で分かりやすいし、過去から現代までの福祉国家論を総まくりするという目的の範囲内で、具体的な実例も、分かりやすいものを選んである。私の必要に一番あっていたのは、第三章のフェミニズム福祉国家分析の箇所だった。 本書が得意な要約形式でいうと、1) 家庭という、福祉のほとんどがそこでまかなわれる生産と再生産の場としての領域は、伝統的な説明においては一貫して無視されてきたこと、2) 公式の経済統計にあらわれるような福祉サービスや国家福祉サービスのような、より公的な諸制度は、それらと家族=世帯制度内でなされる福祉サービスとの関係を無視しては理解されないこと、である。