データを確かめて、天平7年から9年の天然痘でどのくらいの人が死んだか、ちょっと推算してみた。データは、早川庄八「公げ(まだれに「解」)稲制度の成立」『史学雑誌』69(1960), no.3, 1-53. から取った。
しばらく前にも触れたが、出挙(すいこ)で貸し付けた稲のうち、どれだけが借りての死亡によって免ぜられたのかということを各国ごとに報告したものが、正倉院にある「正税帳」という史料に記されているそうで、これを使って、天平の天然痘でどれだけの人が死んだか計算しようとしたのが、ウェリン・ファリスである。地域によってばらつきはあるが、死亡による免除が、各地域で25-45%くらいの数字を出しているから、死亡もそのくらい、人口の四分の一から三分の一くらいだろうというのがファリスの推算である。