『チェネレントラ』


今日は無駄話。

新国立劇場ロッシーニのオペラ『チェネレントラ』を観る。シンデレラの話だけれども、下敷きにした原作が違っていて、ペローが有名にしたかぼちゃの馬車もガラスの靴も12時を打つ時計もない。その代わりに単純な形式とロッシーニ・クレッシェンドがひたすら繰り返される。不思議なもので、それでも作品としては成立していて、アンサンブルやアリアを堪能したという気分になる。しばらくは聞かなくてもいいけれども(笑) 

これまで割りとたくさんオペラを聴いているけれども、今日、初めての経験をした。それは「アンコール」である。アリアの後の拍手が鳴り止まないときには歌手がそのアリアをもう一度歌うことがあるというのは、話には聞いていたけれども、実際に歌われるのを劇場で聴くのは初めて。二幕のテノールのアリア-専門的にはカバレッタというらしい-は、高音の「ハイC」が二つある聴かせどころで、歌い終わったあとの拍手と歓声はとりわけ大きく、必ずしも聴衆が「アンコール」を求めていたわけではなかったのかもしれないが、テノールがもう一回見事に歌い上げた。「得をした気分」というのはちょっと違う。私のオペラ経験はイギリスと日本という、たぶん観衆がおとなしい文化だから、話に聞くところのイタリアの聴衆のようにアンコールを求めて劇の進行を妨害するというようなことはなく、私自身、アンコールを求める期待はなかった。今回はまったく予想していなくて、あら、これが話に聞くアンコールかしら、と思ったというのが正直なところ。でも、やっぱり、少し嬉しかった(笑)

画像はしばらく前に記事にしたチェチーリア・バルトリの『チェネレントラ』のCD写真。