キーツのラブレター

書棚で別の本を探していたときに、ふと目に留まったキーツの手紙を読む。文献は、Keats, John, Letters of John Keats: a Selection, ed. by Robert Gittings (Oxford: Oxford University Press, 1970).

キーツ(John Keats, 1795-1821)は若くして結核で死んだ詩人の代表で、昔、少し結核の歴史を調べたときに、伝記や手紙を丁寧に読んだことがある。

キーツは1819年の冬に喀血した。医学を学んだことがあるキーツは、自分が吐いた血を見て、「この色の血なら知っている。心臓からきた血だ。」と言ったとされている。この文句は、いつもは人の死を客観的に見ている医者が、自分の死を突きつけられたときの残酷さと、人間的な動揺と科学者としての抑制を示すものとして、特に医者たちに人気がある。

1820年にキーツは転地療養をすることになり、イタリアに向かう。母国を離れて弟や妹に書いた手紙、そして恋人のファニー・ブローンに宛てた手紙が特にすばらしい。T.S. エリオットは英文学の詩人が書いた手紙の中では最高のものだといっているそうだけれども、それもうなずける。