『アウトブレイク』

必要があって、映画『アウトブレイク』をDVDで観る。ダスティン・ホフマンが、主人公の陸軍の疫病対策部の医者で熱血漢の役を演じている。

1995年の作品で、前年に出たリチャード・プレストンのノンフィクションの手に汗握るバイオ・スリラーのノンフィクションのベストセラー『ホット・ゾーン』を忠実になぞっている。主人公(?)は「モタバウィルス」によって起きるアフリカ発の出血熱ウィルスで、これはプレストンの主題であるエボラ出血熱とほぼ一致するし、女主人公が誤って手をメスで切ってしまって感染するエピソードも、プレストンを効果的に使っている。映画は、アフリカから密輸された実験動物に寄生していたウィルスにより、アメリカ本土の小さな町で致死率100%の出血熱の流行が起きてしまうという話で、それに、陸軍が秘密裏に開発していた対細菌兵器の血清の話が絡む。前者はマールブルク熱の流行で実際に起きたことをベースにしているし、プレストンも実験動物を主題にしている。アメリカの細菌兵器については、朝鮮戦争で実際に使ったかどうかについては異論もあるところだが、アメリカが日本の731部隊の実験データと引き換えに、731部隊の責任者であった石井四郎を免責したことは事実である。

プレストン以前にも、91年の湾岸戦争の終結とともに明らかになったイラクのサダム・フセインの細菌兵器の開発、92年にロシアが細菌兵器を開発していたことを認めるなど、世の中が細菌兵器の恐怖に脅えていた時期であった。