昭和26年の覚醒剤調査

必要はなかったが、純粋なミーハー精神に基づく好奇心で(笑)、今から半世紀前の覚醒剤調査の資料を読む。文献は、手書き・ガリ版刷りの資料で、表紙には、参議院厚生委員会専門員室『覚醒剤に関する調査資料』(昭和26年3月)。六大都市の覚醒剤に起因する犯罪で検挙・補導されたものの統計を中心にして、それ以外の報告書などの内容をまとめた、簡単な報告書である。

ヒロポン」で有名な覚醒アミン剤類は、終戦直後から戦後にかけて乱用されて問題になった。国民に広まった背景には、戦争中に軍隊や工場などで、眠気覚ましや疲労回復のために半ば強制的に用いられたこともあるという。覚醒剤に起因する犯罪で検挙されたものが、昭和25年には2,000人くらいいて、この数を見るとたいしたことはないようだが、厚生省や警察が、これを氷山の一角だと見ていることは確実である。理由は「好奇心」とか「疲労回復」とかが多い。「勉学のため」というのも数は少ないがいて、これは学生、それも中学生や高校生の受験勉強らしい。日本の警察は、アメリカの状況を参考にして、今は覚醒剤の問題だが、次は睡眠剤の乱用が起きるという予想を立てている。これは正しかったのかしら?

なお、この報告書が引用している大阪大学の精神神経科の調査資料によると、急性専門学校程度の学生や看護婦、犯罪少年、劇場関係者などを対象に調査をした結果、一回以上使用したことがあるのは、25%くらい。医学部系の学生だと63%、文系の学生だと50%くらいである。劇場関係者は、ワルぶりたい奴が多いという印象を持たれたのか(笑)、「誇大に発表する傾向が見られる」と、よく分からないことが書かれている。