鴎外とフロイト

同じく新着雑誌から、森鴎外フロイトについての論文を読む。文献は、新田篤「森鴎外によるフロイトの神経症論への言及」『精神医学史研究』13(2009), 115-124.

これまでは、日本におけるフロイトへの最初の言及だと思われていたものよりも4ヶ月早く、森鴎外フロイトに言及していることを発見した論文。これまでの日本におけるフロイトへの言及の第一号は、明治36年の8月の『哲学雑誌』に、佐々木政直がチューリヒ大学のステーリング教授の講義をまとめたものの中で、フロイトの『ヒステリー研究』に言及したものであるとされていた。しかし、それよりも4ヶ月早く、森鴎外は、明治36年の4月に『公衆医事』に連載したものの一つである「性欲雑説」において、フロイトに言及している。この記事は、大正3年に、鴎外の衛生学の大著である『衛生新編』の第五版に「男子の性欲抑制」の項目で採録されている。そして、この論文は、鴎外文庫の中に鴎外が所蔵していたフロイトの書物があること、そこには書き込みが存在することなどをつきとめて、鴎外がフロイトをかなり読み込んでいたことを明らかにしている。