ジェイムズ『心理学』と新年の決意

昨日取り上げたジェイムズの Principles of Psychology を縮約した版を翻訳したもので、読んだ感じでいうと、だいたい半分くらいになっている。この本の全体像を一度通読して頭に入れておきたかったので、岩波文庫から上下二巻で出ている日本語訳を買った。

日本語で一通り眺めておいて、とても有益だった。ロマン主義ヴィクトリア時代の精神などがそこかしこに刻印されていて、「科学以前」の心理学が持っていた魅力と深みが感じられた。たとえば、「意識の流れ」という、モダニスト文学の中心テーマと重なる心理学の知見を語るときには、若き日に心を躍らせていたものが、みな無味乾燥になってしまい、友人や恋人、星、森、川、永遠の乙女、絵画、ゲーテの詩、ジョン・ミルの思想も、みな空虚になってしまい、「これらすべてに変わって、いまは仕事仕事に夢中になり、日常の義務や平凡の善の重要性だけがますます重みを増してくる」というロマンティックなノスタルジアを挟みこんでいる。それに対して、「習慣」の章は、最もヴィクトリア時代的、保守的で散文的な道徳を称揚している。習慣は社会を駆動する力であり、最も貴重な保守力を社会の中で果たしている。習慣によってのみ、われわれは制度の拘束の中に留まることができる。裕福な家に育ったものを貧しいものの羨望と蜂起から守っているのは習慣である。25歳にもなれば、若い商人、医師、教師、弁護士といった職業的な色彩が定まり、上着の袖についた折り目のように、急に変えることができないようになる。そして、この折り目は、概して言えば、変えないのがよろしい。われわれ多くのものにおいては、30歳までに、職業を通じて形成される性格が漆喰のように固定するが、再び柔らかくならない方が世間のためによい。

さて、新年の誓いや決意の時期だろう。ジェイムズが描く「決心」は、「上着の袖についた折り目」のような、情け容赦ないヴィクトリアンな厳しさを持っている。

決心や理想が脳に新しい「型」を作るのは、決心がなされるときではなく、決心が運動的効果を生み出す時期である。「実践の機会が現実に存在することのみが、てこの支点となり、この支点によって道徳的意思がその力を増し、高揚されるのである。支えるべきしっかりした土台のない人は、空虚なジェスチャーの段階から決して先へは進めない」