日本人類学の歴史

新着雑誌を見ていたら、日本人類学の歴史についてのシンポジウムが開催されていた。最近、ひょんなことで(笑)、日本人類学の歴史と少しだけ関係がある主題についての論文を仕上げているので、よろこんで読む。文献は、坂野徹ほか「シンポジウム <昭和史>の中の人類学者―人類学と科学史の対話」『科学史研究』48(2009), 228-252. 

人類学の歴史を研究している日本とフランスの科学史家と、日本の人類学者たちを集めて、人類学の「歴史」と現在について考えようというシンポジアムである。シンポのコーディネイターの坂野さんによると、「現在、沈滞状態にあるとも囁かれる科学史を活性化する一つの方法」として、人文・社会科学を含む学問史の研究へとさらに開いていくための試みであるという。私はこの学会の状況に暗いし、この手の発言の言葉尻を捉えるのは気が咎めるけれども、沈滞状態にあるって、本当だろうか。ある学問領域が沈滞しているかどうかのひとつのバロメーターは、学術雑誌と学術書の水準だと思うけれども、坂野が数年前に出した大部の書物を見ると、決して沈滞している領域には見えないけれども。

アルノ・ナンタの、古典的な科学史の概念史の方法を軸にした論考が面白かった。この人の論文を読まないと・・・と、まさにこのように、科学史の中に閉じこもっているから、閉鎖的で沈滞していると批判されるのかしら(笑)