『病気でない病気』

必要があって、いまから40年以上前の朝日新聞の「健康」欄で人気があった連載を読む。単行本化されて、『病気でない病気』として出版された。もちろん、今では古書でしか買えないけれども、わりと長い間人気を保っていたらしく、初版は昭和43年、私が買ったのは昭和52年の第五版である。

朝日新聞の「みんなの健康」に昭和40年から42年まで106回にわたって連載された記事。連載中から大きな反響があった。その道の専門家の有名な先生に意見を聴き、朝日の科学部の一線の記者たちが書いていた。医者に相談するようなことではないけれども、なんとなく気になっている「病気でない病気」という企画である。具体的な項目を挙げると雰囲気が分かるから、列挙すると、どわすれ、やせっぽち、低血圧、三白眼、音痴、毛深い、ガニまた、大根足、などである。こういう現象について、東大教授なんかが出てきて解説を加えて、重くなったらお医者さんにかからなければならないこともあるけれども、くよくよしないことが一番、という落ちで記事が作られている。

本筋とは関係ないけれども、女性蔑視というか、女性嫌悪とすら呼べるトーンが激しい記事が散見した。たとえば、「荒れ性・あぶら症」というお肌の荒れについての記事では、女性の厚化粧を非難して、「近頃は、素肌美人なんてのにトントお目にかからなくなった。ネコもシャクシもペタペタ・・・あれじゃ、脂肪膜の上にもう一枚皮をつけてるようなもんだ。女って、どうしてこうもツラの皮を厚く見せたがるのかねえ。」いくら冗談めかしているとはいえ、ここまでのミソジニックな発言はあまり見たことがなくて、しかも、この種の記事がかなり目につく。朝日の記者なのか、それとも医学部の教授なのか、あるいはその両方なのか。