『昭和十二年の「週刊文春」』

アマゾンの「この本を買われた方は、次の本を買っています」で並んでいた本をつい買ってしまい、買ってしまったからには、目を通す。年間に何冊かこういうことがある。文献は、菊池信平・編『昭和十二年の「週刊文春」』(東京:文春新書、2007)

戦前に文芸春秋社が出していた『話』という月刊誌がある。昭和8年から15年までに刊行されていた。『文芸春秋』が本格的な論説が多かったのに対し、『話』は社会面の記事のようなものが多く、軽めの内容だった。その『話』の昭和12年号の記事の中から、いま読んでも楽しむことができて、当時の雰囲気が伝わるようなものを選んで、簡単な解説をつけて新書に仕立てたもの。なんてお手軽な本の作り方なんだろう(笑)

もともと、この時期の脳病院の患者たちのリサーチをしていて、患者が暮らしていた世界を背景として知っておこうというつもりだった。それと関係がある、阿部定のその後という記事(刑務所で熱心に風船はりをしていて、他の女囚の二倍近く作業をするそうだ)とか、女性向け木賃宿探訪記など、楽しく読んだ。巻末に『話』の一年分のもくじが掲載してあって、これが、一番貴重だった。金子準二や大槻謙二の性欲討論会や「脳病院三等患者の手記」など、背景とかそういうことではなく、読まなければならない記事が10近くはあった。