『西遊記』(三)

沙悟浄を加えて「旅の仲間」が完成し、本格的な冒険が始まる。沙悟浄の参加以外に語られるエピソードは二つであり、一つは「人参果」の話である。人参果は、9000年に一度赤ん坊の形をした果物をならせ、その木の実を食べると不老不死になるという。この木は世の中で唯一の仙木であったが、その木の実の盗み食いをとがめられた悟空は、これを根こそぎ抜いて枯らしてしまう。その木を生き返らせる方法を求めるという、狂暴な妖怪も血腥いプロットもない、明るい話である。もう一つが、この巻では未完だが、悟空が三人の弟子のリーダー格で一番強いのをねたんだ猪八戒の讒言を信じた三蔵が、悟空を怒って破門してしまうというエピソード。悟空が故郷に帰っている間に、三蔵は(例によって)妖怪に捉えられて食べられそうになっている。

好色で大食という設定の猪八戒が加わってから、色気が匂い立つような美女(たいがいは妖怪が化けたものである)を登場させる機会が多くなって、中国の文学でエロティシズムをどう表現するか初めて知った。