特別学級の歴史

必要があって、特別学級の歴史を研究した書物を読む。文献は、戸崎敬子『新特別学級史研究―特別学級の成立・展開過程とその実態』(東京:多摩出版、2000)

昨日の山田とおなじように、東京教育大学系の障害児教育の研究である。杉田裕という歴史研究に情熱をもった教育学の研究者がいて、資料の保存などに活躍したとのこと。

1907年に文部省は特別学級を設置するように師範学校に指導し、1908年、1911年と劣等児取扱い方法の調査や、低能児数の調査などを行った。義務教育が始まってからすぐに、成績不良の生徒に対する学力向上を目標にした「成績不良児」対策と特別な授業は行われていた。学習指導を必要としている成績不良児と、個人の資質の関係で学業に向かない劣等児は、概念的には明確に区別されていたが、現場ではその境界はあいまいなままであった。1917年に大阪市の「視学」になった鈴木治太郎は、1922年から大阪の貧民窟の児童や水上生活者の児童などを調査した。これに続いて、社会国家において適材適所を実現するために児童の知能テストを標準化した形で行うことを提案した。この、知能測定法の標準化と特別学級の開設は密接に関連していた。