18世紀のヨーロッパ概説

必要があって、18世紀ヨーロッパ史の教科書を読む。文献は、T.C. Blanning ed., The Eighteenth-Century (Oxford: Oxford University Press, 2000).

授業の予習の時に、医学や病気の歴史を歴史一般にからめるときの「背景」として使っている、Short Oxford History of Europe の一冊。このシリーズは、まさに「ヨーロッパ史」で、政治や経済や文化・社会などの主題ごとに、ヨーロッパ全体を鳥瞰して書かれている。医学史の内容だとヨーロッパ諸国にまたがって教えなければならないからこのほうが便利だし、スウェーデンの国王と議会の対立など、私が全く知らない話題についても知識が増えるので、とても重宝している。

この30年間の研究の進展を反映して、科学と医学の歴史もふんだんに盛り込まれている。カメラリズムとMedical Police の話は「政治」の章で大々的に扱われていた。この記述も優れていて、王権と国家が未分化であった状態から抜け出し、国事を合理的・効率的に行うことでより強力な政府/支配が可能になるという信念こそが重要だったというのは、医学史の研究者からは出てこない視点である。大いに勉強になった。