淋病とクラミジア

必要があって、江戸時代中期の日本の人口停滞の原因が性病、特に淋病とクラミジアだったという論文を読む。文献は、Johnston, William D., “Sexually Transmitted Diseases and Demographic Change in Early Modern Japan”, EASTM, 30(2009), 74-92.

徳川時代は17世紀末までは急激な人口増加があったが、18世紀は人口停滞の世紀であった。この時期は経済発展の時期にあたり、経済発展と人口停滞が併存した時代というのは世界史上でも珍しいとのこと。人口停滞→出生率が低い→間引き・子殺しが原因ではないだろう→性病による不妊が問題ではないかという流れで、話は性病に行きつく。性病の中でも、梅毒ではなく、淋病とクラミジア不妊を起こしていたと結論する。(梅毒ではないだろうという議論は、本来はもっと丁寧に検討されていいはずだけど、とても軽い。)日本では「夜這い」のように性風俗は比較的自由であったし、買売春も盛んだったから、性病も広まりやすかった、という流れになる。

この論文の著者は日本の結核の歴史について名著があるけれども、この議論は、はっきりいって、実証も反証もできない次元の問題に議論を導いているという印象がある。困ったな(笑)