バーネット『感染症の自然誌』

昨日のメンデルゾーンの勢いにのって、マクファーレイン=バーネットの『感染症の自然誌』を読む。文献は、Burnet, Frank MacFarlane, Natural History of Infectious Disease, 3rd ed. (Cambridge: At the University Press, 1962).これは、『伝染病の生態学』というタイトルで1966年の翻訳が出ている。それ以外にもバーネットの本は『人間と言う支配者』『遺伝子・夢・現実』と二つ翻訳が出ているようである。

メンデルゾーンのおかげもあって、これまで気がつかなったポイントに面白いように気がつく。優れた論文を読んだあとに優れた書物を読むというのはそういうものだろう。冒頭の章で、彼と当時の感染症研究は二つのスタンスを持っていて、一つが、実験室で、生化学と遺伝子で病原体を研究すること、もう一つが、フィールドで、病気の広がりに与える環境の影響を明らかにすること、この二つが織りあわされて感染症の研究になっている。そして、後者はいわゆる「エコロジカルな」視点である。この「エコロジー」について、バーネットは面白いことを言っている。「エコロジーというのは、生物の 経済学(economics)である。エコロジーは、経済的に重要な動物の過剰と希少性 (scarcity)の研究である。」そこから、有名なミクロ寄生・ミクロ捕食に考えを展開していって、人間とそれにミクロ寄生する微生物の間に「平衡」が達成されるという、いまでも歴史疫学の基本になっている部分が展開される。

この「エコロジーというのは、生物の経済学である」という一文は、いま共同執筆している経済史の教科書に、いただきましょう。