バイオパワー論

事情があってSTSの国際学会に入会して、学会誌 Science Technology and Human Values が送られてきたから、論文を眺めてみた。abstract からして、これが悪名高い STSの文体と思考法か、と思わせるものもあったけれども、何点か面白い議論もあったし、その中の一つはとてもためになったので、それをまとめておく。文献は、Raman, Sujatha and Richard Tutton, “Life, Science and Biopower”, Science, Technology, & Human Value, 35(2010), 711-734.

フーコーのバイオパワー論と Nicholas Rose の発展を受けて、整理しなおす議論である。フーコーの biopoliticsは、国家がかかわる行政的な概念である「人口」を中心に据えていたのに対し、近年のRose and Rabinow は、遺伝子への注目を念頭において、遺伝子を分析できるエキスパートが前面に出た「分子化」が起きていると主張している。それに対し、この論文は、遺伝子分析を中心に据えた権力論においても、やはり人口への関心と国家の関与は継続的に続いているということを指摘している。