ゴルトンの優生学のユートピア

家畜人ヤプー』論のためのメモ。

ゴルトンが死の前年の1910年から書き出した小説Kantsaywhere は、優生学のユートピアを描いた小説である。ゴルトンは優生学の福音を社会に広めるのに夢中であり、優生学の理想を広めるための小説執筆であった。書き上げたところで、ロンドンの出版社のMethuen に出版を持ちかけたが、断られている。原稿を読まされた姪によると、ラブシーンが馬鹿げたほど非現実的だったという。ゴルトンの死後、この原稿のかなりの部分、とくに馬鹿馬鹿しい部分が(笑)、遺産管理者であった姪の手によって破壊されたが、一部がピアソンに送られ、ピアソンが執筆し編纂した三巻本の伝記の中に収録されている。ピアソンによるゴルトンの伝記(手紙などのオリジナルを多く含む、ヴィクトリア朝スタイルのすぐれた伝記である)の、The life, letters and labours of Francis Galton は、いま、Google books を通じて全て読むことができて、もちろんこのユートピア小説を論じた部分も収録されている。