医療人間学と医学史の教育

今日は無駄話。読んだ論文は、Dolan, Brian, “History, Medical Humanities and Medical Education”, Social History of Medicine, 23(2010), 393-405.

来年の4月から私立の医科大学の非常勤で医学史の講義をすることになっている。医学生のグループに向かって、医学部のカリキュラムの中で医学史を教えるのは実は私にとって初めてである。特に自分から積極的に求めた機会ではないけれども、このタイプの講義こそ、私がずっと待っていたものだったと思う。医学史という学問が意義があるかどうかを試される重要な試金石のひとつ―もしかしたら、もっとも重要な試金石―であることは間違いない。

現在のアメリカ医学史の泰斗であるローゼンバーグが、彼の先生だったテムキンに、「医者でない人間が医学史を研究できるか?」と聞いたときに、テムキンはしばらく考えて「無理だろう」と言ったという。(ローゼンバーグは医者ではない。)このエピソードは頭に残っている。エドワード・ショーターが医学史の研究者になろうとしたときに、ハーヴァードの歴史学科を卒業した後で、医学部の授業を受けて、医学を一から勉強して試験まで受けたという。その後ショーターは妙な方向に進んでいって、プロの医学史家たちから孤立していったが、それは彼が医学を学んだこととそれほど深い関係はないだろうと私は思っている。医学を学ばなかった優れた医学史家も多いが、医学を学んで臨床までしていて、しかも優れた医学史家という英米の研究者を私は数多く知っている。

どうすれば、医学生や医者のためになる医学史の講義を作ることができるだろうか。