「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」

東京の国立博物館で、「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」という展覧会を観てきた。平山郁夫の作品を見せると同時に、平山郁夫の創作にゆかりが深い事物を集めて見せるという構成になっている。これはとても野心的な構成であって、現在の創作者の作品と、博物館で展示されるような事物―過去のもの、あるいは遠い地域のもの―を並べて、現在と過去、当地と彼地をつなぐという狙いだと思う。

そこまでは誰でも理解できるけれども、それを実際の観賞の中に生かすというのは、観賞する<技量>が必要だから、いきなり見慣れない日本画を見て、数世紀の時空を融合させることができるわけではない。薬師寺からはるばるやってきた「大唐西域壁画」と、実際に展示されていた事物が、どのように関係して時空の融合の化学反応を起こすのか、私にはわからなかった。

でも、国立博物館シルクロード美術館の優品を揃えた展示は見ごたえがあった。ガンダーラ様式のクシャン朝の仏像は見覚えがあったけれども、同時期の装飾品は、まるでミケーネから出土したような雰囲気があった。桜蘭などの西域で出土して運ばれたものもの(「招来」という言葉を使うのですね)は、日本が中央アジアの美術品ににらみをきかす帝国的な位置を持っていたことを実感させてくれた。アフガニスタンのカブール博物館が荒らされて、その散逸を防ぐために日本に運ばれたものは、複雑な気持ちになると同時に、文化財略奪に複数のパターンがあるだろうなと意識させてくれた。

ロンドンの大英博物館でも、戦火とタリバンによる被害を防ぐために、長いこと隠されていたコレクションがロンドンにやってきて公開されるという。たまたま展示時期にロンドンに行くから、これは観に行こう。日本にも来るといいんだけど。