『日本思想大系 洋学(上)(下)』

岩波の『日本思想大系』が値崩れしている。一冊500円たらずでアマゾンに出ていて、必要に応じて自分で買っている。もともとは、日本の科学・医学についてのマテリアルを手元におきたいためである。しばらく作っていた「医学史方法論」の大学院水準の授業は、かなりできてきたから、今度は、3年くらいかけて、日本でも外国でも使えるような「近現代日本の医学史」の授業を作ろうとしている。そのためにこのセットを買った。

洋学から多様なセレクション。青木昆陽・前野良沢のオランダ語解説法は、江戸から幕末の学者たちは、こんな風にオランダ語を学んだのかという驚きを起こした。外国語教育の人や言語学者に解説してもらったら、さぞ面白いだろうと思う。私には、中国語を日本語に直すときのように、単語単位で日本語に直し、その間に日本語の助詞などを補って、意味が通るようにしているように見えた。下巻には解体新書と、ロシア語の種痘論を訳した「遁花秘訣」がおさめられていた。私は、どちらのテキストも通読したことはないから、これも読もうと思う。(そもそも『解体新書』の通読っていうけれど、解剖学を知らない人間はどうやって通読するんだろう。)

おめあてだったのは、上巻に掲載されている杉田玄白のオランダ医学を説明・擁護する一連の論文。これは、江戸時代の漢文の読み下し文だから、私だと読むのに大変な労力が必要だけれども、量を少なくすれば、日本人の学生はもちろん、外国人の学生でも読めると思う。