ジャマイカの死亡率

必要があって、17-18世紀のジャマイカにおける白人(イギリス人)の死亡率を論じた論文を読む。文献は、Burnard, Trevor, “’The Countrie Continues Sicklie’: White Mortality in Jamaica, 1655-1780”, Social History of Medicine, 12(1999), 45-72. 

議論はシンプルである。17-18世紀のジャマイカにおけるイギリス人の死亡率は恐ろしく高かった。教区簿冊の分析から、出生と死亡の比率を比べると、18世紀にはいって死亡の割合はむしろ高くなり、死亡が出生の3倍近くを占めるようになる。つまり、白人の自然増加は不可能になること、そして、白人が定住して再生産していくアメリカやのちのAU/NZのような植民地ではなく、アフリカから輸入された奴隷を用いた産業の基地として発展していくようになる。

高い死亡率のために、ジャマイカの白人たちは、冷静な計画に基づいた生活態度ではなく、刹那的な享楽をもとめる一方で、宿命論的な態度がかもしだされる。これらの態度は、奴隷に対する苛烈で非人道的な扱いのもとになった。人口学者のこういう議論は、いい加減だけれども、あまり嫌いではないし、むしろ、面白いと思う。「高い死亡率のために」というよりも、「本国よりも高い死亡率のために」といったほうがいいのかな。