『昭和史 戦前編』

必要があって、昭和戦前期の外交と軍を中心とした内政の書物を読む。文献は、半藤一利『昭和史 戦前編 1926-1945』(東京:平凡社、2004)

私が苦手な政治・外交の歴史の書物で、学術的な書物というより、講談風の語り口で、私のような初心者が重要なことを頭に入れておくためにはちょうどいいくらいの水準だと思う。天皇の周辺にいた西園寺を筆頭にした穏健派の動き、陸軍の中の統制派と皇道派の闘争、海軍の英米協調派と対米強硬派の関係などの闘争などと絡めて、張作霖事件、統帥権干犯問題にはじまり、戦争と敗戦に至るまでをわかりやすく語った本である。背景の知識として、ひたすら勉強させていただいた。

気が付いたことを小さなことを一点。身体の比喩の問題である。「国体明徴」という言葉が象徴するように、この時期には、国家を身体になぞらえて有機的な比喩を使って語ることが広まっていた。

「私は国家を人体に喩え、天皇は脳髄であり、機関という代わりに器官という文字を用ふれば、我が国体との関係は少しも差支えないではないか」(天皇機関説に対して、昭和天皇独白録、136)
「新国家が禍根たりしがん腫を一掃し、東洋平和のため善隣たる日本の地位を確認し・・・」(満州国建国宣言の翌日、1932年2月19日の朝日新聞、104)

ついでに、吉田善吾という海軍大臣が、1939年ごろに神経衰弱のため自殺未遂を試みたのではないかという記事もメモしておいた。この事例を調べてみようかな。